Nichiren・Ikeda

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日蓮大聖人・池田大作

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第六章 恒久平和の提言  

「生命の世紀への探求」ライナス・ポーリング(池田大作全集第14巻)

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8  世界のなかの日本
 池田 本年中(一九九〇年)には米ソ戦略兵器削減条約調印のメドがつきましたし、欧州通常戦力交渉の年内調印でも米ソが合意しました。もはや、軍備に野放図に資金をそそぐことは割にあわないとの認識が、広がりつつあるのは事実です。その意味で、軍縮は時代の大きな流れになりつつあるといえます。
 軍縮の流れを加速化するうえで、日本が果たすべき役割は大きいと思います。ご存じのように日本は今″経済大国″といわれております。豊かだといわれても、実際に日本に暮らしている国民は、実感がうすい面もあるわけですが、世界からは責任分担を要求され、日本が世界にどういう面で貢献していけばいいかが、模索されています。
 日本は広島、長崎の悲惨な被爆体験をもっている国ですし、まず第一に世界の平和のために貢献する具体策を提示する必要があります。と同時に、世界は″精神の空白″を埋める″新たな生きるための哲学″を求めております。この面で、大乗仏教の豊かな伝統を誇る日本が果たす責務は大きいと感じております。
 ポーリング 日本は、科学技術の進歩と経済の急速な発展により、世界で最も重要な国の一つになりました。過去五十年間に、日本人の健康状態は大幅に向上しました。五十年前、日本人の平均寿命は、現在とくらべて相当短かったという記事を読んだことがあります。日本が第二次世界大戦以後、軍事的にはたいして発展しなかったという点で、日本は戦争のない世界建設へ向けて、すでに出発しています。現在、日本で軍事力が年々ある程度、増大しつつあることも承知しています。
 日本の四半世紀にわたる繁栄のいくぶんかは、大規模な軍事力を維持するための一〇パーセントから二〇パーセントにもおよぶ、過大な経済的負担が日本になかったということに起因するものだと思います。ここでいうパーセントは対GNP(国民総生産)比の負担率です。日本が経済的な犠牲をはらってまで大規模な軍事力を構築しなければならない理由など、まったく見あたりません。中国が日本を攻撃するような危険がありましょうか。まったくないと思います。
 現代社会では世論の力が非常に大きくなっているので、いかなる大国も、領土拡張や侵略にあえて乗り出すのには、相当の抵抗を感じると思われます。中米のコスタリカは軍隊をもたない国であり、他国もこれに見習うべきですが、もし日本が軍備放棄の政策を採用すれば、世界にとってもっとすばらしいお手本になると思います。
 池田 日本の将来を見通された卓見です。二十一世紀の指針としてうかがっておきます。
 ポーリング 日本は大規模な軍事力に頼らず、核兵器を開発しないという政策を継続すべきだ、というのが、私の意見です。日本は、世界平和樹立への戦いで指導的立場に立つことができると思います。
 いずれにしても、日本が「世界不戦」実現へ向かって各国の先頭に立てれば、すばらしいことです。この道こそが世界が進むべき道であると、池田会長が考えておられることを確信しております。

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