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日蓮大聖人・池田大作

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第十三章 ミクロとマクロ・「生命」の不…  

「生命と仏法を語る」(池田大作全集第11)

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5  新たな価値観求められる生命の世紀
 ―― この分野の研究は、今後どのような方向へ進みますか。
 屋嘉比 たいへんな生活革命、環境革命をもたらすと思います。しかし同時に、“生命の不可思議”が、ますます奥深く広がっていく気が、私はしてなりません。
 とともに、ご存じのように、医学の倫理という大問題が不可避となるわけです。
 池田 謙虚な言葉です。しかし真実でしょうね。仏法では「不可思議の法」、また「不思議実理の妙観」とも説かれている。
 屋嘉比 「不思議実理の妙観」とは……。
 池田 少々専門的になりますが、「教相」上の浅い法門を破して「観心」の法門を立てることです。この「妙観」あるいは「観心」という法門によって、初めてとらえられた宇宙と生命の究極の姿を「不思議実理」というのです。
 結論して言えば、この法門とは「事の一念三千」の当体たる「南無妙法蓮華経」の一法となるわけです。
 つまり、これはまた、科学などの現象論の範疇では、近づくことはできるが、全体観、実在は、どこまでいってもとらえきれないのが「生命」の実理、実相であることを説かれている、とも私は思います。仏法では、これを「妙」ととらえるわけです。
 ―― 『「仏法と宇宙」を語る』でも、さまざまな角度から論じていただきましたが、本当に、生命とは、宇宙とは、という問題は深くつきつめればつきつめるほど、深淵な問題ですね。
 池田 あるイギリスの有名な物理学者に、「宇宙は、大いなる機械より大いなる思想に近い」という言葉があります。この宇宙に存在しゆく生命もまた同じであると……。
 屋嘉比 私は一医学者として、たいへんに感動する言葉です。
 ―― ところで先日、日本で初めて、バイオテクノロジーの国際会議が大阪で開かれました。この会議はソ連も含め、世界二十数カ国、六百三十人もの関係する学者が会したそうです。
 最近はますます、「生命」という問題への関心が、世界的に高まっているひとつの証左と思います。
 池田 屋嘉比さんは行かれましたか。
 屋嘉比 いや、私は忙しくて行っておりません。(笑い)
 日本からは、大阪大学の山村前学長が感銘深い基調報告をされたようです。
 ―― 山村雄一博士ですか。博士は、昨年の甲子園の世界平和文化祭に、来賓として出席されていましたよ。私も会場でご挨拶させていただきました。
 池田 うかがっています。博士はどんな……。
 屋嘉比 博士は会議の冒頭、「生命科学の光が強くなるほど、その影も濃くなる。人間とは何か、科学技術と医学的治療の向かうゴールは何かを問うべき時期に来ている」と問題提起されていました。
 ―― すると、多少の観点の違いはあっても、この対談で私どもがいつも論じてきたことと同じになりますね。(笑い)
 屋嘉比 これはもはや、現代の心ある科学者に共通の実感です。
 池田 ところで私は、トインビー博士の言葉を思い出しますね。博士は、「人間のもつ力が増大すればするほど、宗教は必要になってくる」と言っておりますね。これは、新しい科学時代の生命の哲学、宗教を志向した言葉と、私は今日まで思ってきた一人です。
 ―― トインビー博士は、先生との対談でもたびたび、先生の信条と仏教の生命観に共感をもつと語っておられましたね。私も強くこの言葉が胸に残りましたね。
 屋嘉比 たしかに科学者自身も「全人格的な幸福を求める新しい価値観」(新井俊彦著『生命工学』日本経済新聞社)が求められることに気づいております。
 また、そこにこなければならなくなってきたようです。

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