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日蓮大聖人・池田大作

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第15回学生部総会 第三の偉大なる蘇生の道を

1974.3.3 「池田大作講演集」第6巻

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6  創価学会のプラトンたれ
 次に、皆さん方こそ、わが学会の後継者であるという意味から、ひとことソクラテスとプラトンについてお話ししたい。
 いうまでもなく、ソクラテスは人類史にひときわ高くそびえ立つ、“思想の巨人”である。だが、その思想の巨岩を盤石にし、人類の血液のなかにとどめたのは、その弟子プラトンであった。ソクラテスとプラトンの出会いは、プラトン十八歳ないし二十歳のころであったといわれております。ちょうど諸君の年齢であったわけであります。
 青年プラトンは自ら誇りに燃えてつくりあげた劇詩をもって、詩の競演の会合に出かける途中であった。偶然、ある劇場の前でソクラテスに出会い、彼の話を聞き、巨人の射放つ思想の矢を浴びて、おのれを恥じ、翻然として自作の詩を焼き捨て、弟子となったといわれている。
 それから約十年間、徹底してソクラテスに師事していくのであります。ソクラテスが青年と対話し、歩むところ、つねにその陰にプラトンがあった。その後、ソクラテスが権力の弾圧を受け、苦境に陥ったときも、決してソクラテスから離れることはなかった。裁判の日も、その場所に駆けつけ、自ら罰金刑の保証人になることを申し出たともいわれる。
 ある学者は、こう評価している。
 「プラトンは、ソクラテスの死に至るまで、変わらない弟子であり、親しい友であり、そして彼の死後も、ソクラテスの姿を常に瞼に描きつつ、彼の言行を数多くの対話に記録して後世に伝えたのであった」と。
 ソクラテスは自ら毒をあおいで正義を守り、歴史の最先端に立った。ソクラテスの死は弟子プラトンの壮絶な哲学思索の旅立ちとなったわけであります。プラトンは各地を駆けめぐった。つねにソクラテスの沈黙の声がわが心音と響いてくる。やがて彼は、ソクラテスの思想をまとめ、発展させ、膨大なる哲学体系の山脈を築き上げていくのであります。
 ともあれ、ソクラテスは青年との対話に終始し、その著作は残さなかった。その弟子プラトンが、その思想を後世に伝えたのであります。もし、ソクラテスなくばプラトンはなかったことはいうまでもない。だが、ひるがえって、プラトンなくばソクラテスの存在は、決して時代の血脈とはならなかったであろうことも、明白なのであります。
 この原理は、いかなるい思想流布の場合も共通しております。キリストにパウロ等の弟子が続き、東洋においても、釈迦に十大弟子があり、天台に章安あり、伝教に義真あり、そして末法御本仏日蓮大聖人に日興上人があらわれた。
 すべて後継者のいかんで思潮の興廃は決まるといてよい。諸君は創価学会のプラトンであっていただきたいのであります。妙法という霊妙なる生命の音律によって、触発された新緑の若芽である諸君が大樹と育つのであろうその日こそ――東洋仏法の真髄というべき偉大な思想山脈が、全人類の渇仰の眼前にそびえ立つことを、私は期待したいのであります。
 私は、今月の七日に日本をたって、諸君の代表である原田学生部長らとともに、南米、そして北米の各地に行ってまいります。留守中、国内のことはよろしくお願いいたします。(大拍手)
 世界は、いまや真に人間を究めた無限の光芒を放つ大宗教を求めております。それは、ただたんに、日蓮正宗のメンバーばかりではなく、私の会話した世界的識見の人々も、皆一致して新しき世紀に躍るであろう宗教の必然性を力説しておりました。
 浅学の私が、あえて全世界を駆けめぐるのも、ひとえに学識と英知あふるる皆さんが、必ずや私の意志を継いで、世界を舞台に平和陳列をしいてくれるものと、信ずればこそなのであります。
 ゆえに、諸君は哲理をいだいた“地涌の正統派”として自己をみがきにみがいて、満天の人材のキラ星と光っていただきたいのであります。人類の文化遺産は諸君の胸中に流れていくことでありましょう。そして諸君の胸中の一念から新しい生々たる緑の素膚が広がっていくことも信じたい。
 たとえいまが、寒風にこごえる秋霜の日々であったとしても、尊き珠玉の人間修練の道程と心得て、雀躍として英邁と正義の大地に生きぬいていただきたい。
 この憔悴の時代にあって、やがて心ある人々は二十一世紀の確たる“文化走者”である諸君の存在の大きさを認識し、評価することは決定的であります。
 私も走る。たとえ、それが無償にして犠牲の人間の旅であったとしても、そのために死力を尽くして走りつづけます。
 未来世紀の総体を照らす新たなる光源を、いま私は諸君のまぶしいばかりの歓喜の表情に見いだしている一人でもあります。
 最後に、諸君のご健康と諸君をはぐくんでくださる関係者の方々のご繁栄をお祈りしまして、私の話を終わります。(大拍手)

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