Nichiren・Ikeda

Search & Study

日蓮大聖人・池田大作

検索 & 研究 ver.9

4 日本とアメリカの使命  

「希望の選択」ディビッド・クリーガー(池田大作全集第110巻)

前後
7  「強い国」より「尊敬される国」に
 クリーガー 時には過ちを被った側が、謝罪される前に許すこともあります。広島と長崎で私が出会った生存者の方々の多くが、そうでした。アメリカ政府は謝罪していないにもかかわらず、被爆者たちは自分たちに原爆を落とした者たちを、すでに許しておられました。
 アジアの諸国民に対して、日本が一九三〇年代と四〇年代にもたらした苦しみを謝罪するのは、日本にとって浄化の行為になるでしょう。それは日本がアジアにおける、また世界における平和の建設者、紛争の調停者として自分自身を確立するのに役立つはずです。過ちを詫びるには勇気がいります。しかし政治の指導者は、えてして勇気がありません。ですから、政治の指導者に謝罪の意思がない場合になすべき次善の行為は、私たち一人一人が、個人の立場で詫びることです。
 池田 おっしゃるとおりです。私も、一人の日本人として、韓国の人々、中国の人々、すべてのアジアの人々に、誠心誠意、日本の非道をお詫びしてきました。それを大前提として、アジア各国との文化・教育・平和交流を進めてきたつもりです。
 それに、極東に位置する島国の日本は、歴史的にそれらの国々から多くの文化的恩恵を受けてきました。そうした文化の"大恩の国"に恩返ししたい、というのが私の心情なのです。
 クリーガー 広島と長崎に滞在した折に、私は、謝罪することができました。もちろん、それは公式的なことではなく、個人的なことでしたが、あの原爆投下が両都市の人々にもたらした言語に絶する苦しみに対して「アメリカ人」としてお詫びを言えたことで、私は正しいことをしたと感じました。過去に他者にもたらした苦しみに対し、きちんと謝罪する勇気のある政治指導者たちが、いつの日か、アメリカにも現れるようにと、私は祈っています。
 アメリカに勇気ある指導者が現れることは、アメリカが行使できる軍事力よりも、配備できるどんな武器よりも、蓄積できるどんな富よりも、私たちが偉大な国民になった重要な証となるでしょう。
 池田 片手で握手していて、もう片方の手で武器をつきあわせるような友情はありえません。仲たがいしているより、仲直りしたほうが、心が晴れやかです。間違ったことをして謝らない人間は、嫌われます――国と国の関係も、人間の関係と同じでしょう。「真理」は、明快で単純なものです。「強い国」「金持ちの国」だから偉大なのではない。「心を大切にする国」こそ、真に偉大です。「尊敬される国」です。

1
7