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日蓮大聖人・池田大作

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信心に定年なし  

2005.1.28 随筆 人間世紀の光2(池田大作全集第136巻)

前後
3  九十歳を超えて、なお財界で活躍された松下幸之助氏から、私は還暦を迎えた時に御祝辞を頂戴した。一九八八年(昭和六十三年)のことである。
 その御祝辞のなかに――「もうひとつ<創価学会>をお作りになられる位の心意気で」とあった。まことに気宇壮大、ふと、松下翁の闊達な肉声が聞こえてくる思いがした。
 ″池田先生、還暦や言うても、まだまだ若うおまっせ。これから、も一つ、学会を作ったろうという心意気で、やってみなはれ!″と。
 嬉しかった。新たな闘魂の炎が、わが胸に燃えた。
 わが師常々、「戸田の命よりも大事」と言われた学会の組織である。私は、師をお守りするのと同じ覚悟で、いかなる攻撃からも、広宣流布を遂行する学会を死守し、発展させてきた。大事なのは、広宣流布である。大事なのは、創価学会である。大事なのは、創価学会員である。
 ところが、そのかけがえのない組織を分断し、学会を乗っ取ろうとする、邪宗門の謀略が明らかになったのだ。一九九〇年(平成二年)の暮れであった。
 私は許せなかった。学会の組織の破壊は、私にとって、師の命を傷つけられ、奪われることに等しいからだ! 学会がどれほど宗門を守り抜いたことか。戦後の宗門の興隆は、学会の赤誠なくしてあり得たとでもいうのか! それを、供養を取るだけ取り尽くして、最後は、一言のお礼も、一度の挨拶もなく、陰謀をめぐらし、カットしてきたのだ。人間の道を踏み外した、これ以上の忘恩があろうか!
 日蓮大聖人の御心に違背する、これ以上の破和合僧があろうか! 仏意仏勅の広宣流布の組織を破壊する、これほどの大悪業の輩を倒さずして、どこに仏法の正義があるのか!
 「極悪」を打ち破ってこそ、「極善」である。だから私は、猛然と戦った。全国、全世界の同志も、総立ちになって戦った。そして今や、峻厳に、仏法の正邪は決した。
 衰退の一途をたどる邪宗門と対照的に、わが学会は隆々と大発展した。世界百九十カ国・地域に拡大し、人類的な平和・文化・教育の運動を推進しゆく母体となった。学会は、日蓮仏法を根底にした、名実共に「世界宗教」として、飛躍を遂げたのだ!
 奇しくも、松下翁が言われた″もうひとつの創価学会″の表現に符合するかのように、さらに強靭で、金剛不壊の学会が、世界に飛翔したのである。
 私は、年を重ねるごとに、一日を一週間分に、いな一日を一カ月分にも充実させる思いで働いてきた。広宣流布の戦野も、日に日に拡大し、その運動量は水嵩を増している。
 どこまでも学会と共に! いつまでも広布のために! この決定した心こそ、わが人生を何倍にも濃密に、また豊かに、総仕上げする要諦である。
4  大文豪ユゴーは、五十九歳で、畢生の大作『レ・ミゼラブル』を完成させた。その後も創作意欲は全く衰えず、六十六歳の時、内面の躍動を手紙に綴った。
 「おお! 私が老いることなく、かえって、若く、成長を続けるということは、何より、すばらしい魂の証明ではないか! 私の肉体は衰えるが、私の思想はいよいよ成熟する! 私の老いの姿のなかにこそ、むしろ思想の開花が存在するのだ」(Andre Maurois, Olympio ou la vie de Victor Hugo, Librairie Hachette)
 ユゴーは何歳になっても、戦う魂を失わなかった。民衆を虐げる悪を許さなかった。この闘魂こそ、八十三星霜にわたって旺盛な創造力を支えた源にちがいない。
 私がこれまで対談した世界の識者の方々も、黄金の人生の年輪を重ねておられる。大経済学者のガルブレイズ博士は、今年(二〇〇五年)九十七歳。パグウォッシュ会議の名誉会長であるロートブラット博士も、同じく九十七歳になられる。
 お二人に比べれば、私などまだまだ二十歳も若い。両博士とも、真剣に考えておられるのは将来であった。「未来をどうするか」であった。
5  日寛上人は、「如来七十二歳より八箇年の間に(法華経の)二十八品を説く」とし、「七十六の御歳、正しく寿量品を説くなり」と言われた。(『日寛上人文段集』)
 その寿量品には、仏の寿命は限りなく長遠であることが明かされている。そして、この妙法を信受した人が起こすべき請願が、分別功徳品に説かれている。
 「我未来に於いて 長寿にして衆生を度せんこと」(法華経五〇五ページ)
 私たちの実践に即していえば、長生きをして、少しでも長く、人びとのために働こうとする誓いである。
 なんのために、生きるのか。
 なんのために、長生きするのか。
 それは、わが使命たる広宣流布のためである。
 ゆえに、我らは一生涯、「健康長寿の信心」を貫いていくのだ!
 「絶対勝利の信心」を、あとに続く青年に示し切っていくのだ!
 赫々たる太陽の如く!

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