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日蓮大聖人・池田大作

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転機  

小説「人間革命」11-12巻 (池田大作全集第149巻)

前後
17  本部幹部会のあと、一つの行事がまだ残っていた。それは歳末の二十三日の男子青年部二万人が結集した大総会であった。当時、東洋一の体育館とされていた東京・千駄ヶ谷の東京体育館は、全国から上京した青年部員で、早朝から混雑していた。午前九時から入場を開始し、午後一時の開会前には、場内外の二万余の男子部員が、整然と戸田城聖を迎えた。
 総会は、熱気につつまれて進行した。「日本民族の使命」と題する研究発表では、米ソ二大陣営に挟まれた日本の現実認識からの論が展開された。
 そして、世界の第三勢力である東洋の十二億の民族のために、仏法の法理に目覚めたわが創価学会青年部こそ、世界平和の指導者として成長すべき使命があると訴えた。
 この日、あいさつに立った山本伸一は、近代日本の思想の流れに触れながら、未来にわたって、すべての思想を指導する哲学こそ、日蓮大聖人の仏法であることを語った。
 「仏法の真髄である日蓮大聖人の教えによって、今、五十万世帯の人びとが、現実に、物心ともに幸福になっているではありませんか。この事実こそが、今後の日本の、また東洋、世界の思想を指導するのは、日蓮大聖人の仏法であることを、証明しているのであります」
 そして、「創価学会は″暴力宗教″である」との、誤解に満ちた世間の批判は、三類の強敵の一分にほかならず、毅然として立ち向かうべきであると訴えた。
 「戸田先生が、あくまでも、慈悲と道理をもって、日本民衆を救わ、なければならないと仰せのように、″青年訓″″国士訓″を心に刻み、実践していく人こそ、真実の男子青年部であります」
 伸一の胸には、戸田が、「新しき世紀を創るものは、青年の熱と力である」と叫んだ″青年訓″、「青年よ、一人立て」と奮起を促した″国士訓″が、永遠の指針として脈動していた。
 最後に演壇に足を運んだ戸田城聖は、研究発表に言及して、力を込めて語っていった。
 「先ほども話があったように、世界的な第三勢力の興るゆえんがあるのであります。ハンガリーの今度の問題など、まことに、かわいそうでならない。民衆は、どれほど苦しんでいるか、今日、平和なわれわれの生活から見たならば、悲惨極まるものです。日本をはじめ、二大陣営に挟まれた国々をして、絶対にあのような苦悩に陥れてはならぬと私は思います。
 そのためにも、東洋で第三勢力として立つべき民族が日本です。東洋は、日本を待っている。本当に待っているんです。
 この推進力となるのは、青年の力以外にない。あなた方こそ、日本の青年を指導する指導者です。この確信のうえに立って、信心強盛に、教学を身につけ、体を丈夫にし、自分の商売に熱心に励みつつ、暮らしていってほしいと願って、私の講演に代えます」
 歳末の最後の行事、二十三日の青年部大総会で、一九五六年(昭和三十一年)は暮れた。まさに激動の一年であったといってよい。
 広宣流布の拡大に徹しぬいた戸田城聖は、心身ともに、いたく疲れていた。山本伸一も発熱した。
 今、師も病み、弟子も病んでいたが、戦い切った遺憾のなさに、二人は、なんともいえぬ満足の微笑を顔に浮かべて、年を超したのである。

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