Nichiren・Ikeda

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日蓮大聖人・池田大作

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第一節 自己をつくり、自己に生きる  

随筆「私の人間学」(池田大作全集第119巻)

前後
47  歴史的な偉業を振り返るとき、常に私の胸に迫ってくるのは、苦難を自身の糧として人生を生きぬいた人間の生命の強靭さである。
 ブルーノに限らず、ある人間の勝利が、他者にとってもその実存に迫るような力を持つのは、自己の信念を貫き通してある地平に抜け出た時、それはすでに一個人の領域にとどまらず、生の普遍的な質にまで深化されたものとなるからではないだろうか。
 そして、人生にそうした決定的な勝利の瞬間が訪れることがあるとするならば、それは自己の全存在に猛然たる勢いで襲いかかり、圧倒しようとする苦難と全生命をもって格闘し、乗り越えようとする時に、すべてのものの持つ意味を新たにするような、創造がなされた瞬間ではなかろうか。
 その瞬間に、胸中に赫々たる太陽が昇りゆくように、歓喜がほとばしり、何人も打ち消すことのできぬ凱歌が奏でられるにちがいない。とするならば、どこまでも自己に徹し、自らの生命に生きぬく強靭な人格にあっては、苦難こそ新たなる創造へと跳躍しゆく飛躍台であるとすらいえるだろう。つまるところ、一個の人間の生涯の放つ光彩は、すべての卑小なものや低劣なものに抗して、いかに“不死の道”を歩みぬいたか――。その足跡によってさらに輝きを増していくにちがいない。

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