Nichiren・Ikeda

Search & Study

日蓮大聖人・池田大作

検索 & 研究 ver.9

第四章 血なまぐさい軍事政権から脱却―…  

「太平洋の旭日」パトリシオ・エイルウィン(池田大作全集第108巻)

前後
9  “一人一人の人間”に投資できる社会へ
 池田 全員が参加していると実感する公正な環境は、
 経済発展の道のみならず、すべての建設、運動の推進にとって重要です。私どもSGI(創価学会インタナショナル)の運動は、このことをもっとも大切にしてきました。運動のエネルギーは、一人一人が主体者として人類の未来を開き、平和を達成するのだという心からの願いであり、参加への実感、手応えなのです。それと、トインビー博士は私との対談で「民主主義とは市民の完全な信頼感に支えられることを要求する制度」(『二十一世紀への対話』。本全集第3巻収録)と指摘されていましたが、今のお話と、相通ずるものがあります。
 エイルウィン たしかに、公平な世界を切り開いていくことは、社会をより発展させていくことなのです。貧困、不十分な教育、福祉サービスへの取り組み不足、満足すべき住居の不足、栄養不良……これらは、可能性を秘めたエネルギーや才能や能力の浪費に等しいのです。
 より公平な社会を切り開いていくとは、経済発展によって極貧層の人々に福祉をばらまくことではなくて、一人一人に、人間という資本に投資することなのです。社会正義は、すべての人々に恩恵をあたえます。
 それは、たんに経済的な豊かさによって生活を向上させるだけでなく、各家族、各個人が秘めている力を発揮させ、社会の平和共存に貢献させるための基本的条件をつくりださせるのです。
 池田 仏典には「王は民を親とし」とあります。為政者は民衆あっての存在である、との鋭い指摘です。為政者は社会正義のために民衆に尽くし民衆に仕えていくべきである、との指導者論です。仏法は、そのための慈悲の実践の法を説いたものともいえるのです。
10  奉仕の使命感がリーダーには不可欠
 エイルウィン リーダーに不可欠なものは、おっしゃるとおり、まず、奉仕の使命感、公共心といわれるものです。祖国がかかえるさまざまな問題への関心、自分一人のために生きているのではない、自分が属する国の共同体に奉仕するために生きているのだ、と感じることは、とても美しい生きている理由です。
 第一に祖国、国家共同体が重大事であり、その後、最後に個人的なことがきます。この奉仕の使命感というものを、チリ建国に尽力したオヒギンスのような祖国の父親たちに見いだすことができます。勇敢に、大胆に、祖国のためにみずからの生命を賭けた人たちの中にです。
 池田 よく分かります。
 エイルウィン あなたは今、仏教の指導者論に言及されましたが、キリスト教の教えと一致します。このことは重要であり、意味深長です。キリストは「人間の子は奉仕されるためにではなく、奉仕するために生まれたのだ」と強調し、「偉大な人物になりたいものは他者に仕えなければならない」と弟子たちに説いています。
 しかし、奉仕の意志と、素質だけでは、まだ十分ではありません。節操も必要なのです。節操とは、言っていることを行動に移すこと、信じる価値観や行動原理と合致した行動をとることです。あることを唱えながら、まったく異なることを実際に行うことを、節操がないと申し上げたいのです。
 池田 分かります。言行不一致こそ、指導者にあってはならないことで、もっとも恥ずべきことです。
 私事になりますが、今日まで世界の識者と友情を結び、民間レベルで交流を深めてきましたが、信頼を醸成できたのは、一にも二にも、約束は守る、言ったことは断じて実行する、これしかありません。
                

1
9