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日蓮大聖人・池田大作

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「権威への信仰」を打ち砕く革命 イプセン『人形の家』

「若き日の読書」「続・若き日の読書」(池田大作全集第23巻)

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8  哲学を求め、哲学によって輝く
 女性の力は大きい。可能性は計りしれない。女性の特質が存分に発揮されていけば、行き詰まった男性中心社会で喘ぐ男性をも解放することになろう。そうなれば男性の持ち味も、もっと生かされるにちがいない。「女性の解放」は「人間の解放」の半分ではない。その重みは「全体」にも匹敵することを知らねばならない。
 「女性の時代」はまた「哲学の時代」である。哲学を求め、哲学によって輝き、その事実の姿への信頼・共感が人間を結ぶ。
 その広がりが世界をつつみ、時代を励ましゆく未来を思うとき、そこに豁然と開かれた「人間革命」の大道を、イプセンも満面の笑みを浮かべて闊歩している姿を、私は確信をもって心に描かずにはおれない。
 ──ノルウェーの独立(一九〇五年)を見届けるかのように、その翌年、イプセンは七十八歳で生涯の幕を閉じた。オスロにある彼の墓には、ハンマー(鉄槌)のしるしが刻まれている。
 「重き槌よ、われに道を開け。山の心室に到達するまで」──若き日にイプセンが書いた「鉱夫」という詩の一節である。墓の鉄槌は、それを表したものだという。
 イプセンの作品は、作者が「退場」してしまってからも、人間社会の矛盾の山に、容赦なく「鉄槌」を下し続ける。粉々になった人間と人間をどう結びなおすか。そこに道を開く次なるドラマは、恩師が語ったように、今に生きる私たちが「自分で」綴り、演じるしかないのだ。

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