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日蓮大聖人・池田大作

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精神の「よすが」への遡行  

「大いなる魂の詩」チンギス・アイトマートフ(池田大作全集第15巻)

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7  池田 あなたの作風を彷彿させる、すがすがしい話です。私が十九歳の時、戸田城聖先生に初めてお会いした時、質問したのは「正しい人生とは」「本当の愛国者とは」「天皇をどう考えるか」の三点でした。
 青春の一時期を軍国主義、ファシズムに踏みにじられた迷える一青年が、行きつくべくして行きついた疑問ですが、考えてみると、最初の「正しい人生とは」にしても、たとえばプラトンの大著『国家』八巻の副題が「正義について」とされているように、有史以来の難問なわけです。
 私は、そのことを直観的にでしたが気づいていました。それだけに「それは、難問だな」の一声に始まる恩師のよどみなき答えには、まったく目の覚めるような思いであり、昨日のことのように思い出されます。
 具体的な内容については割愛しますが、つねに笑みを浮かべながら、時折、ユーモアに富んだウイットをはさみ、その弁は、一点のよどみもありませんでした。
 かといって、難解な哲学用語や論理を駆使するわけでもなく、平易な、だれにでもわかる日常用語の中に深遠な哲理を包み込み、その上、断固たる確信の響きをたたえていました。
 私は、その包み込むような説得力に、内心深くうなずきながら、“この人ならついていける”と直覚しました。また、その直覚の正しさは、その後、恩師とともに歩んだ人生が、十二分に証明してくれました。
 私は、恩師をとおして社会を知り、民衆を知り、人間を知った――つまり、恩師という鑑を得ることにより、真実の人生を知ったのです。その意味から、恩師は私のすべてであった、と言いきれることは、私にとって最大の喜びであり、誇りなのです。
 ビスマルク
 一八一五年―九八年。ドイツの政治家。ドイツを統一し鉄血宰相と言われた。
 ファシズム
 第一次大戦後に出現した全体主義的で、対外的に侵略政策をとる、一党独裁、国粋主義の運動、政治体制。イタリアのファシスト党から始まった。
 プラトン
 前四二七年―前三四七年。ギリシャの哲学者。ソクラテスに師事。イデアが真の存在であるとした。

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