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日蓮大聖人・池田大作

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第三章 仏法は「生老病死」をどう超える…  

「生命と仏法を語る」(池田大作全集第11)

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10  「常楽我浄」の人生へ
 池田 重ねて申しあげますが、その「一心」といおうか、「一念」といおうか、瞬間の生命といっても、瞬間、瞬間の連続である。その過去から現在、現在から未来へという瞬間、瞬間の流れは、とどまることはない。
 それはまた「誕生」から「生」へ、「生」から「死」へ、「死」から「無」へ、すなわち「空」へ、また「無」すなわち「空」から「有」へというように、森羅万象にわたって、それぞれの現象、姿というものを演じながら、流れていくわけである。
 つまり、生命というものは永遠に「生死」「生死」を繰りかえしゆくのが、本来の姿なのである、というわけです。
 この点について、戸田第二代会長は、仏法で説くこの三世の生命観というものを、法華経寿量品第十六のなかの「方便現涅槃」という経文を引きながら、よく話してくれました。
 屋嘉比 その寿量品とは、どういう経文なのでしょうか。
 池田 この寿量品によって、釈尊の一代五十年の説法が完結するといわれております。
 簡潔に申しあげますと、ひとつの意義は、「文上」「文底」という次元がありますが、仏の生命が無量、すなわち永遠であることを、初めて明かしております。
 さらに結論していえば、大聖人は、「所詮しょせん寿量品の肝心南無妙法蓮華経こそ十方三世の諸仏の母にて御坐し候へ」とおっしゃっておられる。
 つまりこの宇宙の有情、非情のありとあらゆる森羅三千を貫く「大法則」であり、十方三世の仏の成道の本源の「法」たる「南無妙法蓮華経」の一法が文底に秘沈されているところに、この寿量品の元意があるわけです。
 ── よくわかりました。
 池田 そこで恩師は、この難解なる寿量品の「方便現涅槃」を、卑近な例をとおし、わかりやすく展開しております。
 それは、「涅槃、つまりわれわれが死ぬということは、方便である。人間はだれでも年をとる。そしてこの世の中で生存する生命力がだんだん衰えてきて死ぬ。だが、この身体は死んでも、われわれ自身の生命それ自体は、大宇宙の生命に溶けこんで、『我』として存在し、また生死を繰りかえすのである。いわば、疲れを癒すために夜寝るようなものだ。朝、目がさめて起きれば、また同じ人間である。これが違う人間だったらたいへんなことになる」というような内容でした。(大笑い)
 屋嘉比 なるほど。明快です。(笑い)
 池田 また「もし、われわれが死なないとしたら、地球は老人ばかり増えて、たいへんに困ることが起きてしまう。死ぬところにいいところがある」ともハッキリ言っておられた。(笑い)──いや、明快です。よく思索してみれば、そのとおりです。これもひとつの「妙」なのでしょうか。
 池田 そう思います。「生」も「死」もすべて「妙」であり「妙法」であると、大聖人はおっしゃっておられるわけです。
 まあ、戸田先生は「本有の生死」という大聖人の仏法をふまえられながら、この「方便現涅槃」についておっしゃっていたのだと思います。
 また、仏法では、「三世」の生命を達観なされた仏にそなわった「常」「楽」「我」「浄」という「四徳」というものが説かれております。
 ── その四徳とは、どういうものでしょうか。
 池田 これも簡単に言いますと、「常徳」すなわち、仏の境地は永遠に不変である。「楽徳」すなわち、無上の安楽である。「我徳」すなわち、自身の「我」の生命が自由自在で、他からなんの束縛も受けることがない。
 そして「浄徳」つまり、煩悩の汚れなき清浄の完成という意義になると思います。
 屋嘉比 すると、仏法で説く「不老不死」とは、肉体的な永遠を説くわけではないわけですね。
 池田 おっしゃるとおりです。
 ですから、「不老不死」すなわち「生死」「生死」とめぐりゆく、自身の「生命」の実在を達観した、自在無碍にして、清く、強い、そして永遠にくずれざる自分の「一念」というか、「一心」というか、それを築きあげていくのが、私どもの信仰の目的なのです。
 ── すると、仏法は「現世利益主義」だ、なんていうのは、無認識もはなはだしいですね。
 池田 そのとおりです。
 われわれ人間は、煩悩のかたまりみたいなものだ。その苦悩と煩悶の自身の「我」を現実の人生、生活にあって、「常楽」へ「我浄」へ、より高き人生の目的に向かいゆく大いなる煩悩へと、転換せしめゆく絶対的法則が「妙法」である。
 ゆえに私どもは、妙法の「以信得入」「以信代慧」という法理、法則にのっとって、日々仏法を信じ、行じ、学び、そこから人生、社会の価値創造をしているわけです。
 この一人ひとりの人間の幸せと蘇生への運動は、偉大なる時代変革の、一切の基本となると思っております。

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