Nichiren・Ikeda

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日蓮大聖人・池田大作

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第19巻 「凱歌」 凱歌

小説「新・人間革命」

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49  凱歌(49)
 宗教紛争には、長い歴史がある。根深い憎悪や怨恨があり、一筋縄ではいかないかもしれない。しかし、憎み合い、人を殺し合っていれば、憎悪はますます深まり、その連鎖は果てしなく続く。
 未来のために、これから生まれてくる人たちのために、そんな連鎖は、絶対に断ち切らねばならない。憎悪を友情に、反目を理解に変えるのだ。
 人間は皆、平和を求めているのだ。
 ゆえに、互いに一念を転換し、勇気の対話に踏み出すのだ。自身の心に巣くう、不信と憎悪と恐怖を打ち破るのだ。
 山本伸一は、同行のメンバーに強い決意を込めて語った。
 「宗教間の紛争もそうだが、国家間の争いや、イデオロギーの対立をどう超えるかも、原理は同じだ。
 人間という根源に立って対話し、粘り強く、人間の心と心を結んでいく以外に解決の道はない。
 そこに、真実の平和の道、立正安国の道、人間の勝利の道があることを、私は生涯をかけて示していく覚悟だ」
     
 山本伸一たちがリマの空港に着くと、送迎デッキは、伸一を見送ろうという千五百人ほどのメンバーであふれていた。
 伸一と峯子は、皆に大きく手を振った。
 理事長のセイケン・キシベは、目を潤ませながら語った。
 「先生、ありがとうございました。今回の先生のご訪問で、みんなの心に、忘れ得ぬ永遠の信心の原点が刻まれました。
 ペルーは仲良く、大前進してまいります」
 伸一はキシベと、何度も何度も抱擁し合った。
 彼が峯子と共にタラップを上ると、一段と激しく拍手が高鳴り、天空に歓声が舞った。
 伸一たちが機中の人となり、飛行機が動き出しても、皆、手を振り続けていた。伸一も、窓に顔を押しつけるようにして盛んに手を振りながら、心で唱題していた。
 彼は、皆に、幾度となく、「私は、どこにあっても、皆さんにお題目を送り続けてまいります」と語っていた。その約束通りの行動が、もう始まっていたのだ。信義の人とは、行動の人である。
 やがて、飛行機は離陸し、空高く上昇していった。新しき、希望の明日に向かって。

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