Nichiren・Ikeda

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日蓮大聖人・池田大作

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3 誓い――広島、長崎を訪れて  

「希望の選択」ディビッド・クリーガー(池田大作全集第110巻)

前後
6  ヒバクシャの深き黙礼
 ――松原美代子さんに捧げる
   その人は、深くお辞儀した
   大海よりも深くお辞儀した
   富士の頂から大海の底へとお辞儀した
   深々と、幾たびもお辞儀したから
   風が強く吹いた
   その人のお詫びと祈りのささやきを
   風がすべての大陸へと運んだ
   されどあまりに高鳴る風に
   その人のお詫びも祈りも聞こえない
   大海は猛り狂った
   荒れ狂う分子のダンスに
   海水がせり上がり
   大海は大陸へと押し寄せた
   人々はおののき
   岸辺から絶叫した
   白波を恐れ、吼え狂う疾風を恐れ
   漆黒の地に身を寄せ合った
   風の中の
   その人の言葉を聞こうと
   人々は懸命に耳を澄ました
   ある人には
   お詫びの言葉が聞こえた
   ある人には
   祈りの言葉が聞こえた
   彼女は深くお辞儀した
   誰もそこまではせぬというほど深く
 池田 胸を打つ詩です。「詩でなければ語れない」という所長の熱い思いが伝わってきます。詩とは、やむにやまれぬ魂の奔流であり、人を動かすエネルギーを持っています。
 所長が、広島を再訪されたのは、初訪問以来、三十五年ぶりのことでしたね。
7  再訪で希望は強められた
 クリーガー 三十五年は長い月日でした。広島に原爆が投下されたことを思い出させるものは、あの有名なドームのように、保存されているものしかありません。のちに建立されたものとしては、記念碑や資料館がありますが、今日の広島は、現代風の活気を呈している都市、しかも美しい都市です。
 私は、過去を想い起こすものが保存されていることを知り安堵しました。
 そして心から感謝しています。広島と長崎の被爆は忘れ去られてはならない。記憶することが、人類の未来のために必要なのです。
 池田 おっしゃるとおりです。そういえば、カズンズ氏も十五年ぶりに広島を再訪した印象を、「明るく頑丈な企業ビルが林立するなかで原爆ドームだけは変わってないとすぐにわかった」と言われていました。一九六四年のことですから、クリーガー所長の初訪問の一年後です。
 クリーガー 原爆ドームは、広島に降りかかった破壊を象徴するものです。それは、人類への警鐘の記念碑ですが、同時にまた、人類は悪に打ち勝つことができるとの希望のしるしでもあります。広島には、希望の精神、再生の精神があります。

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