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日蓮大聖人・池田大作

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7 生殖技術と生命  

「健康と人生」ルネ・シマー/ギー・ブルジョ(池田大作全集第107巻)

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2  確かな人生観と家族観に立って
 ブルジョ かつて出産は、性的交渉という男女間の行為の結果でありました。また、生まれた子どもはだれなのかは、法律や慣習によって明白でした。
 ところが今日では、そのような関係性は、少なくとも可能性としては、不必要になりました。そのため会長が指摘されたような問題が実際に生じております。
 とはいえ、それは必ずしも家族の崩壊につながるものであるとは断定はできません。そこから新しい関係性への可能性が開かれてくるかもしれないのです。むしろ人間社会における愛情、性的関係、結婚などの相互関係と社会的適合性についての見直しが、必要になってきたとも考えられるのではないでしょうか。
 たとえば、何世紀もの間存在してきたさまざまな文明のそれぞれに独自の家族形態がありますが、それらが見直されるようになってきたとも言えるかもしれません。
 池田 問題は、生殖医療技術を利用する場合にも、何のために子どもがほしいのか、また、その子に何をしてあげたいのかという根本問題を問い直すことを忘れてはならないということでしょう。
 親のエゴを克服し、あくまでも、この世に生を受ける胎児の人間らしい生存を援助できる喜びと感謝の念をもっているならば、家族の崩壊は防げると思われます。さらに、博士が言われるように、新しい関係性に基づいた家族の創造も可能でしょう。また、「体外受精」は一九七八年、イギリスで初めて成功して以来、世界中ですでに多く試みられ、もはや体外受精は日常的に用いられる技術となった印象がありますね。
 ブルジョ これら生殖技術に関する研究や実験は、大学の研究室を中心に進めてこられました。研究室では、研究員や開業医の間で定期的な交流が行われ、研究成果や応用の評価、管理についてさまざまな監視システムが実施されており、乱用の危険性を少なくしようと努力しております。そうすることが広く信頼を勝ち得ることにつながりました。ただしつねに民主的な討議に参画しながら、明晰な批判精神はつねにもち、警戒をおこたらないよう心がけなければなりません。
 池田 いかなる医療であれ、リスクがゼロということはなく、生殖医療もその例外ではありません。したがって倫理的な議論とともに、安全性をまず確保することで、発展する医療技術の「責任」を示すべきであると考えます。
 そのうえで、どう活用するかは、親の“生まれる子”に対する“責任”にかかっているでしょう。子どもをもつ親としてみずからがどう生き、また子にどのような人生を生きてほしいのか、確かな人生観を基盤としながら、慎重に生殖技術の利用を考えていくべきでしょう。

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