Nichiren・Ikeda

Search & Study

日蓮大聖人・池田大作

検索 & 研究 ver.9

拮抗する三つの“圏”  

「21世紀への警鐘」アウレリオ・ペッチェイ(池田大作全集第4巻)

前後
2  いまや、利用可能な肥沃な土壌に覆われているのは、三千三百万平方キロメートル足らずで、凍土地帯を除く全地表面積の約四分の一というかなり限られたものでしかない。しかも高い生産性があるのは、そのうちわずか二〇パーセントにすぎない。この土地と沿岸水域だけが、人類が実際に住んでいる唯一の場所、棲息環境(ハビタート)であり、今後さらに人口増加が見込まれている人類も、ここに定住しなくてはならない。
 地球の表面の土地と海、大洋、さらに大気と地殻の表層部は、諸環境(サランディングス)と総称することができるが、これらもまた、きわめて重要な意義を担っていることは言うまでもない。これらは生物圏にもともと備わった要素であり、生物圏の維持にあたって不可欠のものである。しかも、人間の需要を満たす多くの価値ある資源を提供する。だが、こうした諸環境は、人間の永遠の家にはなりえない。
 近い将来に地球を覆うとみられる新たな人口の波に、いかに対処していくかを知るために、われわれはここで棲息環境を根本的にチェックする必要があるであろう。まず人間は数百年に及ぶ膨張と上昇の全過程で、何をしたかを考えてみたい。この間、人間は地球上のほぼ全域で、実際に真の変化を成し遂げた。だがその結果はプラス面もあったが、マイナス面もあった。森林を伐採し、農業を振興させ、町や村を広げた。だが一方では他の種を追いたてて死滅させ、さらに地表の砂漠化を加速させた。この結果、地上には人間の存在や活動がなんらの痕跡ももたないような本来の姿を残した場所(すなわち、いまもってなんらかの文明の洗礼を受けていない場所)はごくわずかとなり、野生が太古の姿のまま残されているのは、ごく限られた地域だけとなった。

1
2