Nichiren・Ikeda

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日蓮大聖人・池田大作

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五、国連と真の平和  

「21世紀への警鐘」アウレリオ・ペッチェイ(池田大作全集第4巻)

前後
13  池田 ただいま博士が「平和とは一つの無形の価値であり、心と精神の文化的な状態である」と言われたように、仏法においても、人びとの心・精神の中に確固たる文化的状態を実現するところに平和の鍵があると教えています。
 仏法では、戦争をひきおこす人間の心を“瞋恚”と説きます。瞋恚とは怒り、憎しみといってよいでしょう。さらにいえば、仏法はこの戦争のほかに、飢饉、疫病を根本的な災いとして挙げ、三災と呼んでいます。そして飢饉は人間の心の“貪欲”によって起こり、疫病は“愚癡”によって起こるとし、貪欲・瞋恚・愚癡を三毒と称しています。
 すなわち、これら三つの心の汚濁こそ、あらゆる人びとに苦しみをもたらす三つの災いの原因であると教えているのです。
 したがって、こうした災いを消滅させるためには、それらを生ぜしめている根っこを断ち切らなければならないのは当然です。すなわち、人間の心の中にある三毒をいかにして克服するか──これが仏法の取り組んだ課題であり、仏法の教えとは、その解決法にほかならないといえます。
 仏法は、人びとの心の中に強い英知と、広大な慈悲の精神を打ち立てる“法”を明かし、その英知と慈悲によって、貪欲・瞋恚・愚癡の三毒を抑制する道を示しました。博士が「平和とは……心と精神の文化的な状態である」と定義されたことは、この仏法の教えているところと見事に合致しています。
14  文化とは耕すことであり、馴致することです。三毒を野放しにし、その横暴に脅えているのは非文化的な状態です。英知と慈悲の心を強くしてこそ、これら三つの毒を馴致し耕地化して、これを賢明に抑制していけるのです。それは野生の馬や野牛を飼いならして労働力として活用し、火を使いこなして文化を生み、毒を変じて薬とするようなものです。
 人類は、これまで外なる世界を耕し、物質やエネルギー、生き物を馴致することには努力し、成功を収めてもきましたが、自らの心の内なる野生については、放置してきたといって過言ではありません。もちろん、倫理・道徳は、その部分的試みではありましたが、それだけでは、心の深層にある巨大な力に対してはあまりに無力です。
 平和のためになされた軍縮の努力も、所詮はこの最も大切な鍵を忘れていたところに、失敗の原因があったといえます。それゆえにこそ、私は「心と精神の文化的状態」の創出のため、仏法の教えを世界の人びとに伝え、めざめさせるべく全力を注いでいるのです。
 注1 訳註 キメラ=ギリシャ神話の、ライオンの頭・ヤギの体・ヘビの尾をもち、火を吐くという怪獣。
 注2 著者注 『二十一世紀への対話』(前出)。
 注3 訳註 カフカ的=カフカ的とは“空想的な”“夢物語的な”“因果律を無視した”の意。カフカ地政学は、ナチスの拡張論の基礎理論であった。

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