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日蓮大聖人・池田大作

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忘れえぬ師弟の語らい 「仏法は勝負」最高の人間道を歩め

2007.9.20 随筆 人間世紀の光4(池田大作全集第138巻)

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6  アメリカの民衆詩人であるホイットマンが、私は好きであった。
 ホイットマンには、全幅の信頼を置く弟子トローベルがいた。師は、この愛する弟子夫妻の媒酌人にもなった。
 ホイットマンの生前最後に刊行された詩集『草の葉』の「第九版」の出版にも、若き弟子トローベルの献身的な尽力があった。
 「早く見たい」と待っている師の元に、勝利の凱旋報告の如く、弟子は、息せき切っこ、刷り上がつたばかりの『草の葉』を届けた。
 師の喜びは、弟子の最高の喜びであった。
 牧口先生にお仕えする戸田先生もそうであられた。
 戸田先生にお仕えする私も、そうであった。
 一八九二年の三月、逝去した師ホイットマンの傍らで、手を握っでいたのも彼である。
 亡くなる前、ホイットマンは日を開けて、最後の視線を弟子に向けた。
 ──未来を頼むぞ!
 弟子トローベルは、その無言の遺命を生命に刻んだ。
 彼は綴っている。
 「その時あなたから私に、未来の委任が渡されたのだ、その刺那、あなたより私に、あなたの血脈から私の血脈に」(「私の逝ける同志〈ウオルト・ホヰツトマンに〉」、長沼重隆『トラウベルを語る』所収、東興社)
 弟子は、いかなる毀誉褒貶にも動ずることなく、胸を張って、師ホイットマンを世界に宣揚していった。
 師の研究雑誌を、生涯の最後まで、約三十年にわたり、断固として刊行し続けたのも、彼である。
 その雑誌の名前は「ザ・コンサベイター」──意訳すれば、「宣揚」となろうか。
 偉大な師の真実を護り、正義を師子吼せんとの、深き誓いを込めたのであろう。
 師ホイットマンは、こう謳った。いな、こう叫んだ。
 「まず自分自身のあいだからその最良の見本を提供することが必要である。そして一人でも二人でもそういう見本を提供することによって、集団全体が千年も輝くものとなるのだ」(「第一八期大統領職!」亀井俊介訳、『アメリカ古典文庫』5所収、研究社出版)と。
 一人の真実の弟子を持てた師匠は幸せである。
 牧口先生が殉教して残された正義の大道を、戸田先生が一人、厳然と受け継がれ、社会に開いていかれた。
 その道を、私が一人立って、同志と共に、世界百九十の国々と地域へ広げてきた。
 戸田先生が勝ったからこそ、牧口先生が勝利された。
 私が勝ったからこそ、戸田先生が勝利されたのだ。
 そして、わが後継の青年部が、日本中、世界中で勝ちまくってくれるがゆえに、私も永遠に大勝利なのである。

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