Nichiren・Ikeda

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日蓮大聖人・池田大作

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世界の識者との対談の思い出 「今」の行動が未来を開く

2007.3.15 随筆 人間世紀の光4(池田大作全集第138巻)

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13  この五月で、博士との最初の語らいから、三十五周年。
 最初は小道でも、歩み通していくなかで、豁然と視界が開け、四方八方へ大きく道が広がる時が来る。
 思えば、私と世界の識者との対談集の第一号は、″欧州統合の父″クーデンホーフ・カレルギ一伯爵との『文明・西と東』(本全集第102巻収録)である。
 その発刊日は、一九七二年五月四日。不思議にも、私がトインビー博士と対談を開始する前日であった。
 対話の一歩、また一歩が、次の対話を生み、今や五十点を超える対談集、千六百回を超える平和と文化の「対話の大道」へと広がって、地球を結び始めたのである。
 トインビー対談の中国語版には、大文豪の金庸きんよう先生から序文を寄せていただいた。
 金庸先生も、トインビー博士と私が鮮明に眺望した「新たな千年のビジョン」が、今まさに、創価の師弟の激闘によって実現への道を進んでいることを喜んでおられた。
 その原動力は、第一線の勇敢な友の地道な対話である。
 まさにオーストリアの作家ツバイクが、「もっとも無名の勇士たちはつねに素晴らしい!」(『人類の星の時間』片山敏彦訳、『ツヴァイク全集』5所収、みすず書房)と讃えた通りだ。
14  トインビー博士は、雄々しき勇者の魂光る英雄であられた。
 正義と邪悪が戦う時に、中立を装い傍観することは、結局、悪に味方することだと喝破されていた。
 ご自身も、いかなる圧迫や中傷にも怯まず、常に正義の信念を言明してこられた。
 だからこそ、難を受けながら戦い抜いてきた創価の三代への信頼は、絶対であった。
 博士は、古代ギリシャの哲人へラクレイトスの至言「戦いは万物を生む父親である」(『ヘラクレイトスの言葉』田中美知太郎訳、『世界人生論全集』1所収、筑摩書房)を、よく引かれた。
 そして、厳しい競り合いのなかでこそ、理想を実現する力が鍛えられ、真の価値が創造されると達見しておられたのである。
 トインビー博士とは、世界の文学も縦横に語り合った。
 博士も高く評価されていた、ロシアの大文豪ツルゲーネフは高らかに謳った。
 「新鮮な春の息吹きにつつまれて、胸がどんなにのびのびと呼吸することだろう、手足がどんなに軽快に動くことだろう、全身にどんなに力がわいてくることだろう!」(『猟人日記』下、佐々木彰訳、岩波書店)
 人生は、行動した人が勝ちだ。対話した人が勝ちだ。
 「さあ、今日も、共に語りましょう! 人類のために! 未来のために!」
 あの日あの時、トインビー博士が青年のごとく言われた言葉である。

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