Nichiren・Ikeda

Search & Study

日蓮大聖人・池田大作

検索 & 研究 ver.9

「立正安国」の悲願  

2005.4.12 随筆 人間世紀の光2(池田大作全集第136巻)

前後
3  戸田先生は、第二代会長に就任して三年後、政治・経済・教育など、社会の各分野に有為な人材を送る、「文化部」を新たに設置された。この翌年の昭和三十年(一九五五年)四月、統一地方選挙が行われた。ちょうど五十年前のことである。
 当時、国民の″政治不信″は募るばかりであった。ある政党は大企業の資本家ばかり擁護した。ある政党は大きな労働組合の利益ばかりを優先した。しかし、派手な政治対立の谷間で、組合もない小さな町工場で働く大多数の庶民は、政治の恩恵から置き去りにされた。民衆不在の日本政治の悲惨な現実があった。戸田先生は激怒された。
 「政治家は何をしているのか! 庶民がかわいそうではないか!」
 どんなに民主主義の看板を掲げようが、庶民の苦悩の声を聞こうともしない政治は、インチキだ。民衆の声に応答しない政治は、自らの責任を放棄した敗北の姿だ。
 日蓮大聖人は、幕府権力者・平左衛門尉に、「あなたは『万民の手足』ではないか。この国が滅びんとするのを、どうして嘆かずにいられようか」(御書一七一ページ、通解)と厳しく諌められた。
 民衆が根本である。民衆が主人である。民衆の幸福が目的である。そのために民衆が立ち上がり、民衆の手に政治を取り戻すのだ! 
 ここに、日本の政界にも人材を送り出す、最大の焦点があったのである。
 五十年前(一九五五年)の四月、選挙戦も始まっていたある日、私は、戸田先生に呼ばれ、東京都議選(大田区選出)と、横浜市議選(鶴見区選出)の支援の総責任者に任命された。
 青年が突破口を開け! 青年が全責任を持て! 文化闘争の「初陣」への、先生の期待は大きかった。
 だが、事務所を訪れてみると、候補者も、支援担当の幹部も、世間的な皮相の活動に流され、浮ついていた。当時の腐敗した金権選挙の風潮に、不安をいだいている人もいた。本来、我らは、その汚れた政治を変えるために立ち上がったのだ!
 「宗教心ナキ改革ハ皮相なり、勇気ナキナリ、元気ナキナリ」(『田中正造全集』11、岩波書店)とは、明治の思想家・田中正造の断言である。その燃え上がる信仰を、我らは持っているではないか!
 私の心は熱く燃えた。仏法は勝負だ。戦う以上は断じて勝つ! 妙法を胸に、全人類の宿命転換へ立ち上がった民衆が、いかに崇高で、いかに偉大な力をもっているか、日本中に示してみせる!
 我らの武器は、どこまでも誠実な対話であり、勇気の対話である。仏法者としての社会的使命に目覚めた、民衆の団結の力で勝つのだ!
 私は、多摩川を渡って往き来し、徹底して同志を励ましながら戦い抜いた。結果は、いずれも最高当選――「初陣」の民衆は、美事に大勝利を飾ったのだ! それまでの日本になかった「新しい民衆運動」の、堂々たる第一歩であった。
 その挑戦が、傲慢なる既成勢力からの嫉妬と反感を呼び起こすのは、もはや必然のことであった。今も方程式は同じである。それは、「立正安国」への戦いは、民衆を侮蔑し、隷属させる「権力の魔性」との戦いであるからだ。断じて恐れるな! 断じて負けるな!
 この戦いのなかから、民衆が勝利に輝く人間世紀が、晴れ晴れと始まるのだ!
4  仏法を基調とした、我らの平和と文化と教育の活躍の舞台は全世界である。全民衆の幸福が目的である。島国日本のちっぽけな嫉妬の顔色など、気にする必要はまったくない。大事なのは、正義を叫び抜く行動だ。
 アフリカ女性で初めてノーベル平和賞を受賞したケニアのマータイ博士は、お嬢さんに「たった一人になったとしても、正しいことは正しい」と教えられながら、何度も語られたそうだ。「不可能なことなどないのよ!」
 そのマ一夕イ博士は、二月にお会いした折、仏法の価値観を全人類が共有すべきだと強調され、笑みをたたえて私に言われた。
 「私は、池田会長の価値観を持ち帰ります。そして、会長の考えをアフリカに広めていきたいと思っています」
 私は今、ノーベル平和賞受賞者のロートブラット博士(パグウォッシュ会議名誉会長)と対談を進めている。九十七歳になられる博士は、″今日の世界の窮状を打開するために″と、私に格別な期待の言葉を寄せてくださった。
 「ぜひ、池田会長にグローバルな指導力を発揮していただき、世界の平和を確かなものとするために必要な変革をもたらしてもらいたいのです。今、それができるのは、池田会長だと思うからです」と。私のことはともかく、これが、仏法の人間主義への、世界的な″戦う知性″の熱い期待である。
 詩聖タゴールは詠った。
 「余念のない精神をもってこの混乱の海を渡って行け、
 そして新しい創造のあの岸にまで船を進めよ!」(「渡り飛ぶ白鳥」片山俊彦訳、『タゴール著作集』1所収、第三文明社)
 世界が待っている。人類が正しき哲学を待っている。
 さあ、誇りも高く進もう! 民衆の中へ! 民衆と共に! 
 さあ、戦おう! 民衆の勝利のために! 世界の平和のために!

1
3