Nichiren・Ikeda

Search & Study

日蓮大聖人・池田大作

検索 & 研究 ver.9

フランス革命二百周年委員会 バロワン委… 世界に友愛を伝えたい

随筆 世界交友録Ⅱ(後半)(池田大作全集第123巻)

前後
5  死よりも悪いことがある
 六月、私はパリを訪れた。夫人と子息を弔問し、ともに墓参した。
 ボージラール墓地の白い墓石が、雨に洗われて光っていた。
 「お父さまは偉大な方でした」。私は、ご家族に申し上げた。「波浪は障害にあうごとに、その頑固の度を増す」の言葉も引いて語った。生き抜いていただきたかった。
 五十六歳。短い生だったかもしれない。しかし、人生には、死ぬことよりももっと悪いことがある。「生きていない」ことだ。
 氏は生きた。いつも、生き生きと生きていた。すべてを乗り越えて、さらに前へ進もうとしていた。氏は、いわば「前のめりに」倒れたのだ。その姿自体が、氏の勝利だったと私は思う。
 八九年、氏が「三十世紀への幕開け」にしたいと願った年は、劇的な「東欧革命」と「冷戦終結」の年となった。
 それは、だれもが力を合わせて未来を拓いていける、開かれた「友愛社会」への出発だったと私は見たい。
6  令嬢の死を機に書き始めた自伝を、氏は『愛の力』と名づけた。墜落事故は、その原稿を出版社に渡した数日後であった。
 原稿は、こう結ばれていた。
 「……さて、わが娘ヴェロニックよ、きみは幸運の星を手に入れる方法をよく知っている娘だった。さあ、私といっしょに、静かに最後のワルツを踊ってくれるね……」(前掲『愛の力 人類精神の啓発を求めて』)
 命果てようとも、志は残る。
 一体の父娘が願ったのは、「友愛の力」で“地球をもっとうまく回転させること”だった。地球の回転とともに、今も、父娘のワルツは続いているに違いない。

1
5