Nichiren・Ikeda

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日蓮大聖人・池田大作

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全世界の中国人の心をとらえた大文豪 金庸氏

随筆 世界交友録Ⅰ Ⅱ(前半)(池田大作全集第122巻)

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5  「血」よりも「文明度」
 「生まれ」よりも「文明度」を重視するのが中国の伝統である。
 ゆえに中国は本来、異民族にも寛容で開放的な社会である。
 金庸氏によると、唐の時代、漢民族以外で宰相になった人物が少なくとも二十三人いるという。
 生まれがどうかではなく、中国から見て「文明化」されていれば、それでよかったのである。「義」という人間の道を共有する者は、だれでも同朋なのである。
 この点、先天的な「血」でまとまってきた日本とは根本的に異なる。日本では、日本民族以外の血を引いていれば、永遠に″ガイジ″ン──″外の人″なのだ。
 文明で統合するのは、人間主義である。そこには普遍性がある。
 血でまとまろうとするのは、島国根性である。そこには排外主義が生まれる。
 トインビー博士の遺言は「中国に学べ」であった。これからの世界一体化の時代にあって、有史以来、一つの文明圏として続いてきた中国の知恵に学ぶべきだというのである。
 一番に学ぶべきなのは、隣国・日本ではないだろうか。
 日本が二十一世紀に生き残れるかどうか。それは、中国のもつ普遍性に学べるかどうかで決まると言えば、言いすぎであろうか。
 その「中国の心」を一番よく表現したと言われるのが金庸文学である。
 その「心」とは──迫害と戦って信念を貫き、体を張って約束を守ることに尽きる。私と氏とも、その心で結ばれている。
 初めてお会いしたとき、金庸氏は、にっこりと微笑んで、こう言ってくださった。
 「中国の格言に『迫害に遭わぬ人は、平凡な人なり』とあります。人に憎まれもせず、焼きもちも焼かれないような人は大した人物ではないのです!」と。
 氏をたたえて、そのままお返ししたい言葉であった。
 (一九九六年十二月二十九日 「聖教新聞」掲載)

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