Nichiren・Ikeda

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日蓮大聖人・池田大作

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反ユダヤ主義と戦うサイモン・ウィーゼン… ハイヤー会長

随筆 世界交友録Ⅰ Ⅱ(前半)(池田大作全集第122巻)

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4  私たちは忘れない
 私が「寛容の博物館」を訪れたのは九三年の一月三十一日であった
 二月初旬のオープンを控え、きわめて多忙のなかを、ハイヤー会長は懇切に案内してくださった。
 アウシュビッツの模型があった。ユダヤ人を隔離して惨殺したゲットー(ワルシャワ・ゲットー)が再現されていた。多くの写真が、フィルムが、声なき人々の声を発していた。
 ──だれが、この痛恨の歴史を忘れられょうか。
 ──だれが、この事実を前に激怒せずにおられょうか。
 しかし日本では、このころも、「ユダヤ人の世界支配の陰謀」とか、ナチズムと同じ内容の本が、次々と出版されていた。
 一番の被害者を加害者であるかのように、すりかえて攻撃しているのである。
 何という無残な「反人権」の風土か。
 ハイヤー会長との出会いから、「勇気の証言──アンネ・フランクとホロコースト」展の日本巡回の計画が生まれた。
 各地で百万人の心を揺さぶる展示となった。
 会長は、広島での展示会で、凛とした声でスピーチされた。
 「今ここで大事なのは、人権が侵害されている世界のすべての地において、声高に、はっきりと、また明白に、人権擁護のために立ち上がり、絶対に訴えていくのだという一人一人の決意であります!」
 会長は「ユダヤ社会以外での″人権の英雄″」を世に知らせるために、連続講演会を企画し、光栄にもその名を「マキグチ記念人権講演会シリーズ」としてくださった。
 創価学会の牧口初代会長が、日本の軍国主義に反対して獄死した歴史を顕彰し、私どもとの連帯を宣言する命名であった。
  第一回講演に招かれた私は、最後に申し上げた。
  「偉大なる思想をもった人間と、そして民族が
  偉大なる信仰をもった人々が
  そしてまた嵐の中で
  壮大なる理想と現実に生き抜いた人間と民族のみが
  限りなき迫害を受け、耐え抜いた人間と民族のみが
  永遠にわたる歓喜と栄光と勝利の『太陽』を浴びゆくことを信じて、私の講演を終わらせていただきます」
5  会場には、ホロコーストの生存者の方々もおられた。親族が犠牲にならなかった人は、だれ一人いなかった。
 ヨーロッパで、そしてアジアで、デマと暴力に蹂躙された方々──。
 見えない幾百千万の人々に、私は心で呼びかけていた。
 「あなた方のことを私は忘れません。私たちは忘れません!」と。
 「あなた方を胸に抱いて、耐えます。戦います。ともに『太陽』を仰ぐ、その日まで!」
 (一九九七年四月二十七日 「聖教新聞」掲載)

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