Nichiren・Ikeda

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日蓮大聖人・池田大作

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ドミニカの民主の父 パラゲール大統領

随筆 世界交友録Ⅰ Ⅱ(前半)(池田大作全集第122巻)

前後
2  自分が光になれば、この世に闇はない
 会見で私はたたえた。大統領が、サントドミンゴ自治大学の学生数を四千人から六万人へと増加させるなど、自由な人間による社会の発展を実現してきたことを。
 大統領がめざしたものは、「貧しき人々を蘇生させ、次の世代にも思想が語り継がれる『心のこもった革命』」であった。
 しかり。心がともらぬ「改革」など政治家の人気取りにすぎない。
 詩人。それは民衆の心とともに生きる人。民衆の鼓動とともに歌う人。
 詩人。それは宇宙の律動とともに歩む人。社会と人間の永遠なる宝を照らし出す人。
 ゆえに私は、本来、政治家はじめ社会の指導者は、詩人でなければならないと思っている。清冽な詩心が胸にわいていてこそ、卑小な現実に染まることなく、高邁な理想の実現へ突き進めるからだ。
 会見室には、ドミニカ解放の父ドゥアルテの肖像があった。彼の言葉に「幸福になりたければ、まず第一に正義の人であれ」と。
 パラゲール大統領は、失明という「死者の世界に埋葬されたような」不幸をも乗り越えた。そして晴ればれと、ドゥアルテの言葉の正しさを証明されたのである。
 暴風雨の人生であった。しかし大統領は書いた。
  何ものもわが旗を切り裂くことはできない
  柏の樹は折り曲げられても
  決して軋まず
  その枝にとまった鳥の囀りに耳をかたむける
 何という余裕。何と寛やかな心の空間であろうか。
 権威の位よりも、人間の位が尊い。
 大統領は、「わが墓石には、私の名前のみ刻んでほしい」と。そして「墓を訪れる人に望む言葉は一つ。それはただ『いい人だった』と」──。
 「よき人間であった」。この言葉こそ最高の勲章であり、賛歌であろう。
 私たちも生きたい。たとえ一人の人からであっても、「あの人の生きたように」「あの美しき人生のように」と慕われる一生を。
 どんな状況にあろうとも、自分自身が光になれば、この世に闇はない。そのことをパラゲール大統領は身をもって示してくださっているのである。
 (一九九五年四月三十日 「聖教新聞」掲載)

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