Nichiren・Ikeda

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日蓮大聖人・池田大作

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「写真で戦った兄弟」 コーネル・キャパ氏

随筆 世界交友録Ⅰ Ⅱ(前半)(池田大作全集第122巻)

前後
3  氏に私は言った。
 「ある『瞬間』の生命に、『永遠』が凝縮しています。肖像写真なら、撮られた人の人間性、過去と未来、宿命、人生のドラマなどの実相が映し出されている。写真とは、その『永遠なる瞬間』をとらえ、表現する芸術ではないでしょうか。
 その意味で、写真家はたんなる記録者ではない。何より、人間性の真摯な追究者であると思います」
 写真を撮るのは、カメラではない。人間である。その人間の生命のレンズが汚れていたり、ゆがんでいたり、惰性でゆるんでいたとしたら、森羅万象の真実に迫れるはずもない。「この瞬間は、もう二度とないのだ
 」──如々として来り、去る、瞬間、瞬間の生命。そのかけがえなさを惜しむ心が、シャッターを押させる。
 写真は、「人生への愛」を極限まで燃やす芸術である。
 ゆえに、ぎりぎりまで人生に苦しんだ人こそ、「生命というカメラ」の力を、ぎりぎりまで引き出せる。深く悩んだ人は、その分、一瞬にも深い内容をつかむことができよう。
 香港のある新聞社から受けたインタビューの中に、「写真がご趣味ですか」とあった。私は答えた。「いいえ、趣味ではありません。私にとって、写真は戦いです」と。
 ──激動の二十世紀。カメラをパスポートに世界を駆けた不思議なる兄弟。二人の魂の歴史は、後世まで語り継がれるにちがいない。
 (一九九四年十月九日「聖教新聞」掲載)

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