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日蓮大聖人・池田大作

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第31回「SGIの日」記念提言 「新民衆の時代へ平和の大道」

2006.1.26 提言・講演・論文 (池田大作全集第150巻)

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24  人類益に立った世界市民を輩出
 私は、軍縮教育の本格的な推進を図るためには、発想の転換と、取り組みの再構築が急務であると考えます。
 軍縮への国際世論を高めるためには、専門家や平和運動に携わる人々だけでなく、あらゆる人々の参加が必要です。ゆえに軍縮教育の推進にあたっては、軍縮を最終目標に掲げるのではなく、人々が"自分自身の問題"として捉えることができるよう、「平和」に対するイメージの転換が求められます。
 単に、戦争のない状態が、平和なのではありません。すべての人々が尊厳を脅かされることなく、それぞれの可能性を最大に発揮し、幸福な生活を築くことができる社会こそが、真に平和な社会と呼べるはずです。
 そこで私は、具体的な取り組みとして、昨年、折り返し地点を迎えた「世界の子どもたちのための平和の文化と非暴力のための国際の10年」=注6=の中に、その中核的要素として軍縮教育を定着させ、市民社会に裾野を広げた活動を展開していくべきであると訴えたい。
 その際、すべてのべースになるのは、「国家主権」から「人間主権」への座標軸の転換であり、「人類益」と「地球益」に立脚した世界市民を育成し、その連帯を広げゆく"草の根レベル"での教育運動です。
 その意味で、軍縮に関する情報や知識を広げること自体が目標なのではなく、人々の意識と行動を「平和の文化」に根ざしたものに変えていくことに、最大の眼目を置くべきでしょう。
 一人ひとりの「心の変革」が、周りの人々の心の変革を促し、それが社会へと広がっていく中で、平和へのうねりを生みだし、国際世論を力強くリードしていく──。こうした"民衆パワー"が軍縮努力を加速させ、「平和の文化」を大きく開花させていくことは間違いありません。
 SGIでも、「世界の子どもたちのための平和の文化の建設」展などの展示を通じた意識啓発に取り組んできたほか、昨年はアメリカのニューヨークとロサンゼルスに、「平和の文化」情報センターを開設しました。
 また明年に戸田第2代会長の「原水爆禁止宣言」発表50周年を迎えることを踏まえ、民衆レベルでの軍縮教育の推進に力を入れながら、「戦争の文化」から「平和の文化」への時代転換の波を起こしていきたい。
25  ロートブラット博士の強い信念
 昨年、惜しくも亡くなられたパグウォッシュ会議名誉会長のロートブラット博士が述べておられた言葉が忘れられません。
 それは博士が、私と、「戦争のない世界」と「核兵器のない世界」を開くための対話を重ねる中で、語られたものでした。
 「池に小石を投げれば波紋が広がります。その波紋は小さく小さくなっていきます。しかし、完全に消えることはありません。どんな人にも、この波紋を生み出す力があると思います。私たち一人ひとりにものごとを変える力があり、それがNGOのような形で連帯すれば、間違いなく外部に影響を与える力も増すでしょう。連帯して世界を変えていこう──それは時間がかかるかもしれませんが、長い目で見れば、最後には民衆が勝利します」
 私どもSGIが、仏法の人間主義を根本に世界190力国・地域で広げてきた「平和」「文化」「教育」の運動は、こうしたロートブラット博士が限りない期待を寄せていたような、"目覚めた民衆の連帯"が、すべての原動力となっています。
 今後も、志を同じくする世界の人々と手を携えながら、まずは2010年までの5年間を、「平和と共生の地球社会」の基盤づくりの重要な挑戦の時であると捉え、勇気と希望の大前進をしていきたいと思います。
26  語句の解説
 注4 【ミレニアム生態系アセスメント】
 国連の主導で2001年6月から4年間、95力国1300人以上の専門家が参加し、実施されたプロジェクト。昨年3月に発表された総合報告書では、人類が過去50年間、かつてないほど急速に生態系を変えてきたことを指摘。このままの状態が続けば、生態系の働きが更に急速に低下すると警告している。
 注5 【京都メカニズム】
 「京都議定書」に盛り込まれた、温室効果ガスの削減目標の達成を円滑に進めるためのメカニズムの総称。先進国が共同で温暖化対策事業を行う「共同実施」のほかに、先進国が技術や資金を提供し、途上国の温暖化対策事業を支援する「クリーン開発メカニズム」、先進国間で排出割当量の一部を取引する「排出量取引」の、三つの制度がある。
 注6 【「世界の子どもたちのための平和の文化と非暴力のための国際の10年」】
 ユネスコ(国連教育科学文化機関)が提唱し、国連が定めた「平和の文化のための国際年」(2000年)を引き継ぎ、2001年から2010年まで、「平和の文化」を追求する動きを世界で高めるとともに、子どもたちに平和の教育と行動を促していく取り組み。

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