Nichiren・Ikeda
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日蓮大聖人・池田大作
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裁判
小説「人間革命」11-12巻 (池田大作全集第149巻)
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判決は、たちまち電波に乗り、全国のテレビ、ラジオで報道されたのをはじめ、新聞各紙にも大きく報じられた。
山本伸一の無罪を知った同志の誰もが、「当然だ!」と思った。そして、喜びに震え、安堵に胸をなで下ろした。ことに関西の会員たちの喜びは大きかった。
「ニュース、聞かはったか。判決が出たんや。無罪や! 先生は、無罪やで!」
ニュースを聞いた会員たちは、同志の家々を駆け巡り、互いに手を取り合い、涙して喜び合った。仏壇の前に座り、感涙にむせびながら、感謝の祈りを捧げる人もいた。
しかし、学会の首脳幹部には、まだ一抹の不安があった。無罪の判決は出たものの、検察は一貫して強硬姿勢を取り続けてきただけに、控訴が懸念されたからである。もし、控訴になれば、またこの先、何年間かにわたって、裁判が行われることになる。それは、学会の前進を阻む大きな障害になるであろうことは、想像にかたくない。
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それから二週間がたつた。
二月八日、伸一は遠く日本を離れ、中東に赴いていた。イラン、イラク、トルコ、ギリシャを経て、この日、彼は、エジプトのカイロに滞在していたのである。
彼のもとに、学会本部から電報が届いた。
「控訴なし……」
判決から十四日間の控訴期間内に、検察の控訴はなかったのである。あの厳しい求刑を思うと、考えられないことであった。検察は、第一審の山本伸一の無罪判決を覆すことは困難であると判断し、やむなく控訴を断念したのであろう。
これで、大阪地裁の判決が、最終の審判となったのである。
伸一は、ホテルで電報を目にすると、にっこりと頷いた。窓から差し込む夕日に、彼の顔は紅に映えていた。
彼は、深い感慨に浸りながら、大阪府警に出頭し逮捕された、一九五七年(昭和三十二年)の七月三日を思い起こしていた。その日が、奇しくも、戸田城聖が二年間の獄中生活を終えて出獄してから、十二年後の同じ日であったことを思い返すと、戸田と自分とを結ぶ、不思議な運命の絆が痛感され、感動に胸が高鳴るのを覚えた。
「先生!……」
今は亡き恩師を偲び、心でつぶやいた。窓外のカイロの空は、夕焼けに染まり、太陽はひときわ大きく、金色に燃えていた。
のちに彼は、との七月三日に寄せて、万感の思いを句に託している。
出獄と
入獄の日に
師弟あり
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