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日蓮大聖人・池田大作

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一念  

小説「人間革命」9-10巻 (池田大作全集第148巻)

前後
26  後の話になるが、戸田が深く尊敬していた、法主の堀米日淳は、戸田が逝去して二カ月後に行われた九州第二回総会での講演で、牧口常三郎の尊い生涯に触れてから、師弟について次のように語っている。
 「戸田先生はどうかと申しますと私の見まするところでは、師弟の道に徹底されておられ、師匠と弟子ということの関係が、戸田先生の人生観の規範をなしてており、このところを徹底されて、あの深い仏の道を獲得されたのでございます」
 日淳は、師弟の関係によって仏道を得ていくというのが、法華経の要であることを指摘して話を続けた。
 「創価学会が何がその信仰の基盤をなすかといいますと、この師匠と弟子という関係において、この関係をはっきりと確認し、そこから信仰を掘り下げていく、これがいちばん肝心なことだと思う。今日の創価学会の強い信仰は一切そこから出てくる。
 戸田先生が教えられたことはこれが要であろうと思っております。
 師を信じ、弟子を導く、この関係、これに徹すれば、ここに仏法を得ることは間違いないのであります」
 日淳は、法華経神力品の「是人於仏道 決定無有疑(是の人は仏道に於いて決定して疑い有るとと無けん)」(法華経五七六ページ)を引き、師弟の道に徹して、「決定無有疑」の境地に到達するという実践をしたのが、戸田であると強調した。
 「戸田先生ほど初代会長牧口先生のことを考えられたお方はないと思います。親にも増して初代会長に随って来られました」と、牧口に随順した戸田の生き方を感慨深げに述べた日淳は、最後に「この初代会長、二代会長を経まして、皆様方の信仰の在り方、また今後の進み方の一切が出来上がっているわけです」と結んでいる。
 まさしく、創価学会の実践的生命は、師弟不二にある。師弟不二の道は、一念における荘厳な不二にあるといわなければならない。
27  一月二十九日、山本伸一は再び関西本部にいた。
 十五日に実施された教学部任用試験の第一次筆記試験合格者二百四十人に、第二次面接試験を行うためである。
 山平教学部長をはじめとする、教授、助教授が、伸一と共に、担当試験官として来阪していた。
 試験会場は、六部屋に分かれ、午前九時から始まった。岡山、高知、堺などから来た受験者は、午前中に終了し、午後は、もっぱら大阪在住の受験者にあてられた。
 この時の大阪での受験者のうち、合格者は、二百二十九人を数え、一挙に三人の助教授を輩出している。全体的に、かなり優秀な成績であったことがわかる。
 今回の全国合格者のなかでは、五人の助教授の登用をみたのであったが、そのうち三人が、実に関西の会員であった。そして、これまで、関西の教学部員は百五十人であったところへ、一挙に二百二十九人の新教学部員が誕生した。関西教学陣は、これで三百七十九人と飛躍したのである。
 伸一は、ここ一カ月の成果に、やや満足した。彼が、関西の戦いに、慎重にも教学の浸透を第一歩としたことは、戸田城聖が、出獄後、創価学会の再建の第一歩を、法華経講義で踏み出したことと似ていた。
 そして、そのうえに、彼自ら始めた面接指導を、全関西の首脳幹部にも急速に実践させたことである。組織の隅の隅まで、一人も余さず、指導の血潮が遅滞なく流れることによって、彼の一念の血行が、関西の地に躍動することを、こいねがった。
 関西広布の動脈は、この一月から、はつらつと脈打ち始めたのである。
 彼は、関西の友の一人ひとりを、心から愛して指導した。彼は、いかなる人にも使命が必ずあるとして、それを訴えながら、その人を尊重して導くことを第一義とした。それは、妙法のもとに、誰人も平等であり、そして、誰人にも、この世の使命があることを、日蓮大聖人の仏法が教えているからであった。
28  一月三十一日の本部幹部会では、一月度の折伏成果は、一万五千七百十七世帯と発表された。大阪支部は三千三百八十九世帯で、全国十六支部の第一位となり、二位の蒲田支部二千七百七十二世帯を、はるかに引き離した。堺支部も健闘し、五百二十四世帯で十二位である。
 ここ一カ月の間に、関西には、約四千世帯の新会員が、新たに広宣流布の戦列に加わることになった。
 その会員の一人ひとりが、真の信心に目覚めていくならば、十人分、百人分の力が備わり、自発・自立の人になりゆくことを、彼は祈りに祈った。
 ″まず、これで教学は軌道に乗ったとみてよい。折伏活動も、波に乗り始めた″
 山本伸一は、意図していた一月の目標が、ほぼ達せられたと、わが胸に納得した。そして、関西の大いなる飛躍のために、弘教の大波を、ぜひとも起こさなければならぬと心に期していたが、その時期は、まだ早いと判断した。若い彼は、逸る心をじっと抑えた。
 彼は、会員一人ひとりに対しての、真心の指導の徹底を、全幹部に強力に促した。

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