Nichiren・Ikeda

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日蓮大聖人・池田大作

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胎動  

小説「人間革命」1-2巻 (池田大作全集第144巻)

前後
9  法華経講義は、活気づいてきた。蒲田の三人の同志も来た。日本正学館の編集部の三島、山平、会計主任の奥村まで参加した。第一回の講義とは、がらりと空気が変わった。戸田より若い人たちの集まりである。真面目に求める息吹があった。戸田のまだよく知らぬ、牧口門下生が、集まって来たわけである。
 戸田の机の真ん前には、清原が座っていた。嬉しいのだ。自分が連絡して集めた人たちである。さらに、新しい学会の、広布の師匠ができたのだ。彼女は、弟子らしく振る舞える自分を、誇らしくさえ思えた。
 戸田は、真剣に講義を続けた。新しい、手応えを感じた。新しい、弟子を感じた。
 ″広宣流布への胎動は、始まっている″
 新しい学会の誕生を、戸田は、早くも感じていた。
 受講者もまた、戸田の、ただごとでない情熱を感じた。決意も読み取った。しかし、彼らには、未来の学会の方向は、皆目わからなかった。ただ、戸田理事長につく以外、その方途を知る術もないことを知ったのである。
10  このころ世間では、幾つもの新興の宗教が、それぞれの目標を掲げて、胎動し始めていた。多くの、民主主義を標傍する団体も、活動を開始していた。
 かって、三千人の会員を擁した創価教育学会は、今、散り散りばらばらになっていた。だが、新出発した学会丸は、わずかな人を乗せ、未来に襲い来る波浪や怒濤も覚悟のうえで、崇高な広宣流布の理想に向かって船出したのである。
 戸田は、この時、既に大きな決断を下していた。それは、創価教育学会からの脱皮であった。
 ″仏法による救済と革命は、ひとり教育界のみを対象とするものではない。仏法を、苦悩に沈む一億の民衆のなかに、広く、深く浸透させ、幸福を実現していくことこそ、日蓮大聖人が示された広宣流布の道ではないか。学会は、全民衆を対象とした、広宣流布のための教団であらねばならぬ″
 そう考えた戸田は、その新しき出発のために、「創価教育学会」という名称を、「創価学会」と発展的に改めたのである。
 日本正学館には、新しい「創価学会本部」の看板が掲げられた。その文字は、春の日差しを浴びて、希望の輝きを放っていた。

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