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日蓮大聖人・池田大作

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随筆「私の人間学」(池田大作全集第119巻)

前後
31  私の恩師戸田先生は、常々、あらゆる角度から組織のあり方について話してくださった。この組織と“死角”の問題についても経営論等を通じて、次のように指導された。
 「会社を経営するには、銀行のように、大きい一つの部屋で仕事をすることが最も大事だ。衝立や小部屋をつくっていくような仕事場は、陰をつくるような結果を生むから、注意しなければいけない。全社員の仕事ぶりを、社長は一望できることが大事である」
 いかなる組織にあっても、原理は同じであろう。何となく見えにくい“死角”が生まれ、中心者からみて、見通しが悪い部分があったときには、必ずそこから問題が発生するものだ。ゆえにリーダーは、全体を一望できる「明快」にして「見通し」のよい組織をつくることが大切である。そのためにも、中心者自らメンバーの意見をよく聞き、全員をよく理解することが肝要となる。
 また“死角”をつくる怖さは組織だけにあるわけではない。人間もまた同じである。
 どこかに不透明な部分を持つ人間、また何か心の底が知れない人は、リーダーはくれぐれも注意すべきである。人を裏切ったり、悪事を働く人間は、どこかに見えない不透明な部分があるものだ。報告がない。顔を合わせることが少なくなる。話をしていても明快でなく、不透明な部分が必ず残るようなときには、危険水域に入ったとみてよい。
 全体が、リーダーの一望のもとに、心を合わせて進んでいく――こうしたダイナミックな明るい組織こそ前進の組織といえよう。
32  同時にまた、五稜郭は“平城”であることに注目したい。ここにも重要な組織の視点がある。組織はいわば城にたとえられよう。いかなる組織であれ、何層にも組み上げられた“そびえ立つ”がごとき“城”ではなく、組織もまた、皆が同じ次元に立ち、ともどもに経験を積みながら進む「公平」にして「平等」な“平城”であることが肝要といえよう。山頂に高く“そびえ立った”山城のような組織になると、リーダーは結局、下のほうが見えなくなり、“死角”をつくることにもなりかねない。
 “死角をつくらない”――それは組織の、そして人の心のあり方の急所といえよう。五稜郭はそうした組織と人の急所を静かなるたたずまいのなかに教えているように私には思われた。

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