Nichiren・Ikeda

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日蓮大聖人・池田大作

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海外出版の尽力に感謝 「創価」の人間主義を世界へ未来へ

2001.11.7 随筆 新・人間革命4 (池田大作全集第132巻)

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2  海外出版の大躍進の陰で、忘れられないのが、翻訳者のご尽力である。
 小説『人間革命』や、トインビー博士をはじめ、多くの識者との対談集は、著名な翻訳家のリチャード・ゲージ氏が、長年にわたり英訳の労をとってくださった。
 また、中国の古典『史記』を初めて英訳されたバートン・ワトソン博士にも、大変にお世話になった。これまで、詩集『わが心の詩』や『私の釈尊観』なども翻訳していただいている。
 一九七三年の師走、博士に初めてお会いした折、私は、こう申し上げた。
 「いつの日か、鳩摩羅什訳の『法華経』の英訳を、お願いしたいのですが」
 法華経は、幾世紀もの間、東アジアで最も民衆に愛されてきた経典である。それは、日蓮大聖人が”羅什三蔵ただ一人、誤りなし”と賞讃された通り、鳩摩羅什の名訳によるところが大きい。
 翻訳が、どれほど大事か。
 初対面であったが、私は「この方なら」と心に期し、博士に要請したのである。
 幸い、博士は快諾してくださり、以来、孜々として訳業に取り組まれた。そして二十年後一九九三年の春、遂に『英訳・法華経』が発刊されたのである。
 それは、古典的な英語ではなく、あえて生きた”現代英語”に翻訳されていた。
 博士は、笑みを浮かべて、こう述懐しておられた。
 「今一番、人びとが求めているものを言葉で表現することが大事です。そのために、わかりやすい現代の言葉を、私は使うのです」
 嬉しいことに、「生命の世紀」の開幕にあたり、日蓮仏法の真髄である「御義口伝」の英語版も、博士の全身全霊のご尽力によって、間もなく完成の運びとなっている。
3  ワトソン博士が英訳された私のエッセー集『ガラスの子供たち』(日本語の『私はこう思う』等から編集)は、アパルトへイト(人種隔離政策)下の南アフリカで、解放運動に挺身する人にも読まれた。
 その南アの解放詩人ムチャーリ氏が、私の本に深く共感され、十数年前、ある雑誌に書いた自身のエッセーにも、私の一文を引いて、紹介してくださったのである。
 さらに、このエッセーを、獄中のネルソン・マンデラ氏(南ア前大統領)が読まれ、私の言葉に目をとめておられたという。
 また、英訳された『私の仏教観』や『私の釈尊観』等は、アメリカのアイダホ大学や、ハーバード大学等でも、教材として学ばれていると伺った。
 本は、友をつくり、未知の同志をつくる。
 活字の力は、まことに大きい。
 魂の共感の響きは、国境を超え、民族や主義主張の違いの壁も超える。いな、文明間の断絶や、時代の流転さえ、飛び越えるのだ。
 「人の精神を開発する出版物は友情を創始する」(『追放』神津道一訳、『ユーゴー全集』9所収、ユーゴー全集刊行会)とはユゴーの確信であった。
 一冊の本を通して、「創価」の人間主義の希望が、いよいよ広く、深く、世界の人びとの心へ、未来の青年たちの心へ届いてほしい。
 それが、平和の世紀を開く確かな種子となることを願い、私たちは今日も書き、明日も語る。

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