Nichiren・Ikeda

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日蓮大聖人・池田大作

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懐かしき通訳の方々 世界交流の″懸け橋″に大使命

1999.1.20 随筆 新・人間革命1 (池田大作全集第129巻)

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6  私が、三度目に、ペルーを訪問した折のことも忘れられない(一九八四年二、三月)。
 滞在の最終日、当時のベラウンデ大統領との昼食会に招かれた際、通訳をしてくださったのが、ローサ・キシモトさん(現・ペルーSGI婦人部指導長)であった。
 ご主人の故ビクトル・キシモトさんと、ペルーSGIの基礎を築かれた大功労者である。
 通訳は直前に決まった。
 大統領ご夫妻、首相ご夫妻をはじめ、閣僚、文化人が出席しての公式行事である。
 さすがにキシモトさんも緊張した。私は、思わず、「心配しなくていいよ」と、声をかけたほどであった。
 しかし、昼食会が始まると、彼女は、毅然としていた。
 大統領の訪日や、日本とペルーの学術・文化交流などを巡って、多彩な話題が弾んだが、気品のある声で、堂々と大役を果たしてくださったのである。
 大統領の秘書官長も、彼女の見事な通訳に感嘆しておられたという。
 私が「よかったよ。ありがとう!」とねぎらうと、ホッとしたように、彼女の笑顔が光った。
7  キシモトさんはペルー生まれの日系二世で、戦争の影響もあって、小学校しか出ておられない。専門的な通訳の訓練を受けたわけでもない。
 しかし、長年、一流の国際雑誌の購読を続けるなかで、自然に幅広い、教養を身につけられたようだ。
 また、語学力もさることながら、ペルーの人びとの「心」を深く理解しておられた。どうすれば、日蓮仏法の精神を正しく伝えられるか、悩み、格闘され続けておられた。
 言葉だけでなく、心を伝え、心と心を結び通わせる――それこそ通訳の妙味であり、人間交流の精髄であろう。
8  文豪トルストイは、こう洞察した。
 「人々を結び合わせるすべてのものは善であり、美である」(『日記・書簡』中村融訳、『トルストイ全集』18、河出書房新社)
 平和と文化の光彩で全人類を結びゆく、我ら創価の使命が、いよいよ輝く時が来た。
 また、通訳の方々に心から感謝する昨今である。

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