Nichiren・Ikeda

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日蓮大聖人・池田大作

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地球民族主義の光 宇宙時代に輝く仏法の叡智

1998.10.28 随筆 新・人間革命1 (池田大作全集第129巻)

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1  この秋、「宇宙」の話題を、多く耳にする。
 今月八日から九日にかけての「ジャコビニ流星群」の出現に続いて、学会の創立記念日の、来月十八日未明には、三十三年ぶりに、「しし座流星群」の大出現が予想されている。
 また、明後三十日(日本時間)には、日本初の女性宇宙飛行士・向井千秋さんがスペースシャトルに搭乗し、再び宇宙へ飛び立つ。
 景気の低迷など、暗いニュースが多いなかで、希望の明星を見るかのような思いがしてならない。
 実験の成功と、無事に帰還されることを祈りたい。
2  向井さんは、一九九四年(平成六年)に最初の宇宙飛行から帰られたあと、本紙の日曜てい談に登場されたことがあった。
 その時、宇宙に出た感想を、「地球を含めた宇宙を一つの生命共有体だと感じました」と語っておられる。
 そして、「人間の一生といっても八十年か百年ではないか。そんな短い誤差範囲の人生の中で私利私欲に走ったり、つまらないことで紛争を起こして戦争をするなんて……」と、慨嘆されていたことが強く印象に残っている。
 かつて、私がお会いした、女性として世界で初めて宇宙を飛んだ、旧ソ連の宇宙飛行士テレシコワさんも、また、アメリカの宇宙船スカイラブ3号の船長であったカー博士も、同様の感慨を述懐しておられた。
 人間は宇宙的な視野に立つ時、発想は大きく変わっていくものである。
3  私は戸田先生から、天文学の個人教授も受けたが、先生は、さまざまな学説に触れながら、よくこんな話をされた。
 「今の研究では、宇宙には太陽系のようなものが無数にあるといわれる。それは仏法で説く、三千大千世界の姿であり、実相である。
 科学が進めば進むほど、仏法の法理の正しさが証明され、その偉大さがわかってくるものだ」
 また、こう語っておられた。
 「仏法のために、もう一度、法難を受け、牢獄に入りたいものだ。
 独房は確かに狭いが、ぼくには、そんな実感はない。『我即宇宙』だよ。ぼくは、大宇宙の広大さに包まれての独房生活だった」
4  宇宙の根本法たる仏法の真髄を覚知された戸田先生は、常に宇宙的視野から、物事を考えられていた。
 そして、東西両陣営の対立の溝が深まる一九五二年(昭和二十七年)二月、先生は「地球民族主義」の叫びを放たれた。
 民族、国家、イデオロギーなどを超え、人類が「地球家族」「世界は一つ」という認識に立って、共存への道を開かなくてはならないというのが、先生のお考えであられた。
 なんという先見か。
 仏法は、万物、万人に、仏の生命が具わっていると説く。
 また、宇宙それ自体を一つの生命体ととらえ、自身といっさいの環境とが不二の関係にあると教えている。
 つまり、人間を地上の支配者とする人間中心主義ではなく、調和と融合の哲理であり、「宇宙的ヒューマニズム」が仏法である。
5  この数年、元ソ連大統領のミハイル・ゴルバチョフ氏と、国連事務次長などを務めたモーリス・ストロング氏を中心とする「地球憲章委員会」で、「地球憲章」の草案の作成が進められてきた。
 地球の環境を保全し、人間を含めたすべての生命を守るために、各国、各民族が守るべき規範をつくろうとの思いからスタートした作業であった。
 私が創立した平和研究機関である、アメリカの「ボストン二十一世紀センター」も、これに協力し、意識の啓発や教育のためのセミナーなどを開催してきた。
 また、昨年十一月には、支援の一環として、『仏教者から見た地球憲章』を出版。
 私も、その序文の依頼を受け、環境問題などを考える一助になればと、「縁起」や「依正不二」の思想について紹介させていただいた。
 同書は、アメリカの四つの大学で教材として取り上げられ、ハーバード大学でも、「仏教と社会変革」の講座で使用されていると伺った。
6  今、人類は、仏法の哲理に刮目し、戸田先生の唱えた「地球民族主義」に、たどり着こうとしている。世界は、「仏法の叡智」を渇仰していることは間違いない。
 宇宙時代の開幕は、「大仏法の時代」の夜明けである。この生命の哲学を友から友へと伝え、世界を結びゆくのが、私たちの使命である。
 満天の星を仰ぎ、大宇宙を心にいだき、今日も、われらの語らいは弾む。
 このかけがえのない地球を、国境なきオアシスに、わが仏国土とするために。

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