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第41回「SGIの日」記念提言 「万人の尊厳 平和への大道」

2016.1.26 「SGIの日」記念提言(池田大作全集未収録分)

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34  核開発と近代化が世界に及ぼす弊害
 3点目の「核兵器の近代化」がもたらす問題については、昨年の提言でも警鐘を鳴らしましたが、核兵器の維持のために年間1000億ドル以上もの予算を費やし続けることにより、結果として“地球社会の歪み”を半ば固定化する恐れがあることです。
 南アフリカ共和国などが提案した総会決議でも、この点に関し、「人間の基本的ニーズがいまだ充足されていないこの世界では、保有核兵器の近代化に充てられる膨大な資金は、このような目的でなく持続可能な開発目標を達成するために振り向けることができる」(「核兵器・核実験モニター」第482―3号)と、提起されたところでした。
 このまま核兵器の近代化を進めることは、次の世代やそのまた次の世代まで、核兵器の脅威にさらされることを意味するだけではありません。核兵器が使用されない状態が続いたとしても、国連の新目標を達成するための道を閉ざしかねず、“地球社会の歪み”が今後も続く事態を意味するのではないでしょうか。
 「核軍縮は国際的な法的義務であるのみならず、道徳的・倫理的至上命題である」(同)とは、総会決議の提案にあたって南アフリカ共和国の代表が訴えた言葉であります。
 その思いは、原爆投下によって筆舌に尽くしがたい苦しみを味わってきた被爆者や、核開発と核実験の影響で被害を受けた各地の“ヒバクシャ”をはじめ、「人道の誓約」に賛同した国々、そして平和を求める多くの人々の一致した思いではないでしょうか。
 私どもSGIも、昨年のNPT再検討会議で発表された「核兵器の人道的結末に対する信仰コミュニティーの懸念」と題する共同声明に加わり、キリスト教、ユダヤ教、イスラムなどの各団体の代表とともに、次のようなメッセージを発信しました。
 「核兵器は、安全と尊厳の中で人類が生きる権利、良心と正義の要請、弱き者を守る義務、未来の世代のために地球を守る責任感といった、それぞれの宗教的伝統が掲げる価値観と相容れるものではない」
 「核兵器を禁止する新たな法的枠組みに関する多国間交渉について、すべての国々に開かれた、いかなる国も阻止できない場における、これ以上の遅滞ない開始を訴える」
 核開発競争は、軍事面でも意味を失いつつあるどころか、保持し続けるだけで世界に深刻な負荷を与え続けるという意味で、かつて牧口初代会長が軍事的競争の限界を論じていたように、実質的に破綻をきたしているとの認識に立つべきだと思うのです。
 年内にジュネーブで行われる公開作業部会で、「核兵器のない世界の達成と維持」のために必要となる効果的な措置をリストアップし、国連のすべての加盟国が取り組むべき共同作業の青写真を浮かび上がらせることができるよう、建設的な議論を行うことを切に希望するものです。
 そして、2018年までに開催されることになっている「核軍縮に関する国連ハイレベル会合」を目指し、核兵器禁止条約の締結に向けた交渉開始を実現に導くことを訴えたい。
35  世界青年サミットを継続的に開催
 明年は、戸田第2代会長の「原水爆禁止宣言」発表から60周年にあたります。
 この宣言を原点に活動を続けてきたSGIとしても、核兵器のない世界への潮流をいよいよ揺るぎないものに高めていきたい。
 そして、多くの国と市民社会が力を合わせ、民衆のイニシアチブによる“国際民衆法”としての意義も込めながら、核兵器の禁止と廃絶を何としても実現したいと決意するものです。
 「核兵器は過ぎ去った時代の象徴でありながら、今も現実の世界に甚大な脅威を突きつけています。しかし、私たちが紡いでいく未来には核兵器の居場所などありません」
 昨年8月、広島で行われた「核兵器廃絶のための世界青年サミット」で発表された「青年の誓い」の冒頭の一節です。
 SGIなど6団体からなる実行委員会が主催し、23カ国から青年が集ったサミットには、アフマド・アレンダヴィ国連事務総長青少年問題特使も出席し、被爆体験の継承や同世代の意識啓発をはじめ、人類共通の未来を守るための行動が誓い合われました。
 その成果は、国連総会第1委員会の関連行事として10月にニューヨークで行われた報告会でも発表され、若い世代が核兵器のない世界の実現に向け、国連や各地域でどのように行動し、問題解決のために参画できるかが議論されました。
 今後も志を同じくする人々や団体とともに、「核兵器廃絶のための世界青年サミット」を継続的に開催していきたいと思います。
 「核兵器の廃絶は私たちの責務であり、権利だ。核廃絶のチャンスが失われるのを、もはや黙って見過ごしはしない」
 「私たち青年は、あらゆる多様性と深い団結のもと、この目標の実現を誓う。私たちは『変革の世代』なのだ」
 国の違いを超えて青年たちが広島で分かち合った誓いが、世界に大きく広がっていけば、乗り越えられない壁などなく、実現できない目標などありません。
 若い世代の心に脈打つ誓いの深さこそが、核兵器によって多くの生命と尊厳が踏みにじられる世界ではなく、すべての人々が平和的に生き、尊厳を輝かせていくことのできる世界を築く何よりの礎なのです。
 私どもSGIは、「変革の世代」である青年の連帯を基盤としながら、核兵器の禁止と廃絶とともに、国連の新目標の達成を後押しし、「誰も置き去りにしない」世界への軌道を確かなものにすることを、ここに固く誓うものです。
36  語句の解説
 注1 持続可能な開発のための2030アジェンダ
  昨年9月の「国連持続可能な開発サミット」で採択された成果文書。宣言のほかに、17分野169項目からなる「持続可能な開発目標」が掲げられている。2030年までに、貧困や飢餓、エネルギーや気候変動など、多岐にわたる課題の包括的な解決を目指している。
 注2 長者窮子の譬え
 法華経信解品にある譬喩。幼い頃に家出し、他国を流浪した男が長者の家で仕事を得て、財産管理を任されるまでになったが、財産は自分と無縁のものと思い込んでいた。しかし長者が臨終を迎える時、自分が長者の実の息子であったことを聞かされ、無上の宝聚を求めずして得た喜びで歓喜する物語。「仏」を父、「衆生」を子に譬え、すべての衆生が仏と同じ最極の生命を開くことができるとの法理を示した。
 注3 仙台防災枠組
 2030年までの国際的な防災指針をまとめたもので、災害が起こる前からあった問題も含めて解決を目指す「ビルド・バック・ベター」の原則をはじめ、災害リスクの理解や強靱化に向けた防災への投資などを優先行動に掲げている。2005年から推進されてきた「兵庫行動枠組」の成果を踏まえ、昨年3月に採択された。
 注4 国連安全保障理事会決議1612
 2005年7月、国連安全保障理事会で採択された決議。紛争下で子どもの命を奪う行為をはじめ、子ども兵士の徴集、学校や病院への攻撃、人道的なアクセスの妨害や拒否など、子どもの権利の重大な侵害行為を監視し報告する仕組みが設けられたほか、安全保障理事会に「子どもと紛争に関する作業部会」が設置された。
 注5 パリ協定
 先進国の温室効果ガスの排出量削減を定めた「京都議定書」に代わる新しい枠組み。新興国や途上国を含め、195カ国が削減目標を国連に提出し、国内対策を実施することを義務付けた。2023年から5年ごとに進捗状況を検証する仕組みが設けられ、21世紀後半に排出量を森林などによる炭素吸収量と相殺して「実質ゼロ」にすることも目指されている。
 注6 武器貿易条約
 6年以上に及ぶ交渉を経て、2013年4月に国連総会で採択された、通常兵器の国際取引を規制する初めての条約。国際人道法や国際人権法に対する重大な違反をはじめ、テロ防止に関する条約の違反につながらないことなどを輸出の判断基準とし、ジェノサイド(集団殺害)、人道に対する罪、戦争犯罪に使用されることが明白な場合には輸出を禁じている。

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