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日蓮大聖人・池田大作

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カナダ・サイモン・フレーザー大学「グロ… 正義と人道のために「対話の勝利」を

2002.7.13 スピーチ(2001.8〜)(池田大作全集第93巻)

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1  不正と戦ってこそ正義
 心から尊敬するサイモン・フレーザー大学の先生方、そして、高名な平和学者の皆さま。本日は、わざわざ、ご来訪くださり、心より感謝申し上げます。ありがとうございました。(拍手)
 また、常勝関西の大勝利の大会、おめでとう!(拍手)
 暑いなか、遠いところ、本当にご苦労さまです。
 平和と正義の殉教者である牧口初代会長は、逝去の約一カ月前、獄中から最後の手紙を出しました。そこには、「三障四魔が粉起するのは当然で、経文通りです」(「獄中書簡」、『牧口常三郎全集』10所収、第三文明社)と認されていました。
 正しいからこそ、難を受けるのだ。ゆえに、何も恐れてはならない――それが牧口先生の確信であり、遺言でした。この手紙には、「カントの哲学を精読して居る」(同前)とも書かれています。
 初代会長は、獄死の寸前まで、学び続け、世界的な哲学者カントを研究していました。カントの哲学は、仏法の英知とも響きあっています。
 カントの有名な言葉に、こうあります。
 「高慢は阿呆である」(『人間学・教育学』清水清訳、玉川大学出版会)
 関西の皆さんの言葉で、わかりやすく言えば、「いばりくさった傲慢な人間は、アホや!」(笑い)となりましょうか。
 庶民出身の大哲人カントは、このように、笑い飛ばしたのです。
 さらにカントは、「社交のばかげた虚栄」や「他人に対する見せかけ」を厳しく戒め、「欺くものこそ実は馬鹿なのである」(同前)、「嫉妬、忘恩、他人の不幸をよろこぶ気持ち(中略)は悪魔的悪徳と名づけられよう」(『宗教論』飯島宗亨・宇都宮芳明訳、『カント全集』9所収、理想社)等々、悪に対して痛烈に叱咤しました。
 不正と戦ってこそ正義である。不正を見て見ぬふりをしているような正義などない。邪悪と戦わない正義ならば、それ自体、虚栄であります。
 ゆえに、カントは、人間の尊厳を踏みにじる権力者や坊主を徹底して責めたのです。
 自分も威張らないし、人も威張らせない。ありのままの人間として、誠実に語りあい、朗らかに友人をつくり、あたたかく青年を育てていく――ここに、永遠の平和をめざした、人間カントの具体的な哲学と行動があったといえましょう。そして、それは、わが関西の明るく、さわやかな人間共和の世界と、深く、強く、響きあっています。
 きょう、お迎え申し上げたサイモン・フレーザー大学のミルトン・ウォン総長も、さらにロバート・アンダーソン議長(同大学「対話センター」学術諮問委員会)も、そして戸田記念国際平和研究所のマジッド・テヘラニアン所長も、なんと謙虚であられ、なんと豊かな人間性にあふれておられることか。これが、最高峰の知性の実像です。
 私たちは、最大の尊敬をこめて、歓迎の大拍手をお送りしようではありませんか。(拍手)
2  サイモン・フレーザー大学の挑戦――世界へ「心の橋」を架けよう
 今年は、関西広布五十周年。関西の皆さん、本当に、おめでとう! 愛する常勝の大関西、万歳!――と、私は、心から申し上げたいのであります。(拍手)
 貴サイモン・フレーザー大学がそびえるバンクーバーは、歴史的に、関西からも多くの人が移住し、活躍していった縁深き天地です。
 かつて、インド独立の指導者ネルーは、この地を訪問し、こう讃嘆しました。
 「現代世界の問題の多くは、世界が変っているのに人の心はこの変る世界に適合できる程に変らないという事実によるものです」「バンクーバーのような所はこの喰違いに対し、現にそうであるような単なる地理的な意味の橋渡しばかりでなく、精神的心理的な橋をかけるのに適当なところです」(『自由と平和への道』井上信一訳、社会思想研究会出版部)
 今まさしく、貴大学は、地球一体化の時代を先取りし、世界市民の心を結ぶ橋を架け、多文化交流の実り多き対話を推進しておられます。
 対話の重要性を、これほど声高らかに叫んでおられる大学を、私は知りません。
 その貴大学からの意義深き栄誉を、私は、満腟の感謝をこめて、関西の不二の同志とともに受けさせていただきます。まことに、まことに、ありがとうございました。(拍手)
 (席上、ウォン総長より「グローバル対話貢献賞」がSGI会長に授与された)
3  ウォン総長ならびにアンダーソン議長の傑出した指揮のもとに開設された、貴大学の画期的な「対話センター」も、今、世界から注目を集めています。
 とくに、その会議場の座席は、数層にわたって、円形に配置されていると、うかがいました。
 なぜ円形なのか。そこには、すべての参加者が本源的に平等な立場から対話し、調和を奏でていくという深遠な思想性がこめられているのです。
 関西創価学会も、皆が平等な同志として、上も下もなく、励ましあいながら、理想的な「円形の人間連帯」を広げています。まさに日本第一の人間の連帯です。
4  戸田会長は「権力の魔性」を決して許さず
 振り返れば、戦後、私の恩師である戸田第二代会長は、「愛する関西の大地から、不幸と悲惨をなくしたい」と大願を起こしました。
 この恩師とともに、私たちは一丸となって「希望の哲学の対話」を開始したのです。
 私たちの運動は、世界に開かれ、民衆を賢く強く連帯させゆくものでした。それゆえに、偏狭な島国根性の勢力からは、嫉妬され、迫害されてきました。それは、皆さまも、ご存じのとおりであります。
 その点について、戸田記念国際平和研究所のテヘラニアン所長は、次のように洞察してくださっております。
 「歴代会長の勇気の行動は、日本の軍国主義への抵抗であるのみならず、民主主義の実現と教育の改革のための果敢な挑戦です。したがって、創価学会の歴史が迫害との闘争となることは、必然であったのです」
 見事に本質を見ぬいてくださっています。世界には、まことの「智人」がいるものであります。(拍手)
 とくに「大阪事件」にあって、邪悪な権力は、当時、すでに体が衰弱していた戸田会長を、最終的な標的として狙っていました。
 その恩師を断じて厳護するために、若き私は一切の矢面に立って、入獄しました。師匠を守ることこそが、創価学会を守ることであり、正法正義を守ることであり、広宣流布を守ることであると信じたからです。
5  四十五年前(一九五七年〈昭和三十二年〉)の七月の三日、北海道から羽田を経由して、大阪に向かう機中で、私は、完成したばかりの恩師の小説『人間革命』を手にしました。
 戸田会長自身をモデルにした主人公の名は「巌九十翁」。言うまでもなく、あの文豪デュマの大傑作『モンテ・クリスト伯』――『巌窟王』の物語から取った名前であります。
 「権力の魔性」は、もっとも正しい牧口初代会長を獄死せしめました。
 戸田会長は、この狂った「権力の魔性」を決して許さなかった。
 弟子として、必ずや正義の仇を討つ! そして偉大な師匠を未来永遠にわたって、世界に宣揚してみせる!――そう固く誓ったのです。
 この燃え盛る闘志と執念が、「巌窟王」という一言に凝結していたのです。
6  鍛えと友情が青春の財産
 私の胸には、『巌窟王』のラストシーンが鮮やかに思い浮かびます。
 それは、陰謀をめぐらせた人間たちへの復讐を成し遂げ、恩人の子らを幸福にした主人公が、船に乗って、水平線の彼方に去っていく光景です。まことに美しいドラマの終幕です。
 関西青年部の皆さんも、わが人生の主人公になっていただきたい。
 人生だから、当然、悩みもある。苦難のときもあるにちがいない。しかし、人生は、くよくよしてはなりません。自分自身が、人生の名優となって、劇のごとく、堂々と、そして生き生きと、波瀾万丈の青春を生きぬいていくのです。
 人生の本当の勝負は、五十代から決まる。その土台をつくるのが、今の青春時代の闘争です。
 堅固な土台なくして、立派な建物が建つはずがない。
 そのために、今、徹して苦労していくことだ。苦難を避けず、広宣流布の組織の中で、信心を磨き、自分自身を鍛えぬいていくことだ。この峻厳なる連続闘争によってのみ、本当の人生の勝利をつかむことができる。それは、諸君の先輩方が、厳然と人生の上で証明しておられるとおりである。
 若き皆さんは、まず、何ものにも負けない自分自身をつくっていただきたい。獅子のごとく! 巌窟王のごとく!
7  現在、私が創立したパリ郊外のユゴー文学記念館では、生誕三百周年を迎えたユゴーとデュマの展示会が開催されています。そこには、大文豪ユゴーがデユマに捧げた追悼文も展示されています。その中に、こういう一節があります。
 「戦いとは権利であり、勝利とは幸福である」
 深い友情の言葉です。命がけの信念で結ばれた友情――これほど強く尊いものはありません。この真実の友情の世界を広げていくのが、私たち創価学会なのであります。(拍手)
8  常勝の獅子たれ! 巌窟王たれ!
 先日、「聖教新聞」に、総長のすばらしいインタビューが掲載されておりました。(六月二十五日付)
 中国からカナダに移住された総長ご一家が、どれほどご苦労を重ねられたか。とりわけ、総長の二人の兄君は、一流大学を卒業された最優秀の英才でありながら、当時の人種偏見のせいで、理不尽にも就職の門を閉ざされました。
 しかし、そうした陰湿な差別を前に、若き総長は、いつの日か自分の手で「平等な社会」を実現してみせると気高く決意されたのであります。そして、その誓いのままに、高貴な使命の人生を、堂々と歩み進んでこられました。
 その姿に、私は深く深く感動いたしました。
 現在、バンクーバーでは、「平和の文化」の祭典として中国の伝統的な「ドラゴン・ボート」競走が盛大に行われます。多様な民族が一体となって友好を深めあう、この夏の風物詩も、総長が先頭に立って提唱し、実現されたものなのであります。
 総長のことを、「ビジョンと勇気をもった人道主義者」「地域共同体のチャンピオン」等と、賞讃し、敬愛する人々の声は、あまりにも大きい。
 総長は、勝ちました。堂々と、勝ちぬかれました。ウォン総長は、まことの獅子であられます。(拍手)
 わが関西青年部の皆さんも、どうか「獅子」として生きぬいていただきたい。臆病な羊のような人生であっては、絶対にならない。
 バンクーバーと関西のどちらにも、不滅の足跡を刻んだ、中国民主革命の父・孫文先生は言われました。
 「勝敗を交互にくりかえしていて、どうして成功といえよう!」(『孫文選集』2、林要三訳、社会思想社)
 「常勝」こそが、革命児の本懐である。
 勝ったり、負けたりしていて、どうするのか。戦いは、すべて勝て! それでこそ、真の人生の勝利者である――こう思うのであります。
 その意味において、私は、「関西青年部よ! 全創価学会のために、勝って、勝って、勝ちまくれ!」と申し上げたい。頼むよ!(拍手)
 日本一の、最高の勝利を飾っていただきたい。
9  「勇気ある対話」こそ真の知性
 二十世紀の初めに、女性の権利を勝ち取るために奔走したカナダ初の女性判事、エミリー・マーフィーがおりました。わが関西婦人部、さらにまた関西女子部を、ほうふつさせる勇敢な女性であります。
 このカナグの先駆の女性は、叫びました。
 「いかなる障害もはねのけて、抗議の声をあげゆく人にこそ、世間は道を譲るのです」
 おとなしく黙っていては、何も変わらない。どんどん声をあげた人が勝つ。黙っているのは、臆病である。悪に対しては、その十倍の勢いで言い返していくべきである。
 どうか皆さんは、創価の正義を、堂々と叫びきってもらいたい。
 今こそ、関西が、「勇気の対話」「信念の対話」「知恵の対話」の力で、断固たる歴史を切り開くときである。
 どうか、日本の先駆者たる関西になっていってくれたまえ!(拍手)
 私は関西を信頼しています。関西が一切の焦点です。
10  貴大学の紋章には、フランス語で「われわれは準備ができている」と刻まれております。
 私は、本当にすばらしい意義を持った紋章であると感動しました。
 「いつでも、どこでも、正義と人道の精神闘争を開始する準備ができている」「戦い、勝つ準備ができている」――関西魂の真髄も、ここにあります。
 総長は、貴大学と私たちが共有するモットーとして、「不可能に挑戦する精神」、そして「新たな創造のための冒険の精神」をあげてくださっております。
 この挑戦と創造の精神を生き生きと躍動させ、今ふたたび、不可能を可能にする師弟不二の象徴たる、一千万の金字塔を、大関西から打ち立てましょう!(拍手)
 こう申し上げ、私の御礼のスピーチといたします。
 どうか、お帰りになりましたら、全関西の尊き同志の皆さま方に、くれぐれもよろしくお伝えください。
 敬愛するサイモン・フレーザー大学に、永遠の栄光あれ!
 大関西に、永遠の常勝あれ!
 お体を大切に! きょうは、本当にありがとう!
 (東京牧口記念会館)

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