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日蓮大聖人・池田大作

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ロサンゼルス最高会議 社会の進歩は母の力

1996.6.5 スピーチ(1996.6〜)(池田大作全集第87巻)

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1  トルストイ「民衆よ立て! 高潔さを武器に」
 私どもは家族である。偉大なる庶民の家族であり、宿縁深き三世の家族である。ともに素晴らしき人生を生きましょう!
 「ロサンゼルス最高会議」おめでとう。
 ロサンゼルスの天地は、アメリカ広布の電源地であり、世界広布の要である。ロサンゼルス勝利こそ、SGI(創価学会インターナショナル)の勝利なのである。
 愛するロサンゼルスの地で、愛する友と、明日(六月六日)の「初代会長牧口常三郎先生の百二十五回目の生誕の日」を心ゆくまで祝賀し、荘厳したい。
2  昨日(四日)は、サイモン・ウィーゼンタール・センターにおいて、牧口先生についての講演(「牧口常三郎――人道と正義の生涯」)をさせていただいた。
 この講演の記念として、牧口先生の直系たる創価教育の卒業生である「アメリカ創友会」の有志が、ロシアの文豪トルストイの直筆とされる文書を届けてくださった。
 これは、トルストイが、一九○三年、ロシアのキシニョフ(現モルドバ共和国)でのユダヤ人虐殺ぎゃくさつ事件に対して、ロシアの皇帝に書き送った抗議書簡の草稿そうこうであるという。
 一九○三年といえば、講演でも言及したように、牧口先生が『人生地理学』を発刊した年である。この書を通して、先生は、世界市民の意識を呼びかけ、人権と人道、平和と共生の指標を提唱されたのである。
 このユダヤ人の虐殺事件では、暴動によって、約五十人が殺され、四百人以上が負傷したとされる。本当に、筆舌に尽くせぬユダヤ民族の歴史である。
3  では、なぜ、こうした暴動が起こったのか?
 その背景の一つには、権力者や聖職者による煽動せんどうがあったといわれている。
 彼らは、さまざまな手段で、ユダヤ人への憎悪と反感をあおった。新聞には、ユダヤ人への悪質なデマが報じられ、うわさが飛びかい、暴徒を駆り立て、虐殺という最悪の事態を招いてしまったのである。
 トルストイは、この事件に激怒した。
 ある手紙で彼は、ユダヤの人々をわが兄弟として愛する心情をつづり、素晴らしきユダヤの知人との出会いをふり返っている。
 トルストイは、暴徒の蛮行ばんこうの犠牲となった罪なき人々へ深い哀悼を捧げ、暴動を煽動した″教養人″を激しく嫌悪した。なかんずく、群衆を″無知″と″狂信″に陥れた権力者と聖職者にこそ全責任があるとトルストイは弾劾だんがいしたのである。
 そして、トルストイは力強い筆致で呼びかけている。「民衆よ、暴力でなく非暴力で、『高潔なる生き方を武器として』権力に立ち向かえ!」と。
 こうしたトルストイの″人間への慈愛″″権力への怒り″″民衆への信頼″は牧口先生とも、まさに一致する。
 牧口先生への敬意をこめて、そしてまたユダヤの人々との深き連帯の心をこめて、書簡を届けてくださった創友会の心が、私はうれしかった。また、凛々しい成長が頼もしかった。
 後輩を自分以上の力ある人材に――これが先輩の祈りである。師匠の祈りである。
4  アメリカSGIもまた、宗門の宗教的権威に対して、敢然と戦った。その功徳は大きい。
 大聖人は、「功徳」について「悪を滅するを功と云い善を生ずるを徳と云うなり」と仰せである。
 正法破壊の悪と戦う。その戦いが自分自身の生命を浄化して、功徳が出る。
 悪と戦わないで正義や幸福を考えるのは、幻である。そういう戦いがないのが幸福だと思うのは錯覚にすぎない。
 極悪と戦ってこそ極善の人生となる。何があろうと、悠々と乗り越えていける自分自身となる。
 その意味で、アメリカは″皆が正義の王者″″皆が幸福の長者″と生き抜いていただきたい。
5  平和学の創始者ガルトゥング博士は、学会の民衆運動に期待
 私ども夫婦の大切な友人である″平和学の創始者″ガルトゥング博士が、今、創価大学で特別講義を続けてくださっている。
 また先日(五月十八日)はご夫妻で関西創価学園で講演し、教職員や学園生と親しく対話してくださった。その折の博士のお話を、うかがったので、何点か、紹介させていただきたい。
 懇談の中で、ガルトゥング博士は「″他人の不幸の上に自己の幸福を築くことはしない″との創価学園の教育方針に、深く賛同します。
 この指針は、経済的に言えば″他人の貧困の上に自分の富を築かない″に当たり、政治的に言えば″権力を奪って、強力な権力をもたない″など、いろいろなところに結びついていく普遍的指針です」と。
 また「教師は、一生懸命、教育に当たることは当然、大切ですが、はたして『それが子どもにとって善になっているか』を問う姿勢を忘れてはならないと思います」とも言われた。リーダーもまた同じであろう。
 ガルトゥング博士は、質問会で質問をした二人(男女各一人)の生徒について、「あの二人を今後とも見守っていきたいと思います。何かあれば報告をしてください。十年後の二〇〇六年にお会いしたいと思います」と語るなど、学園生との出会いを大変、喜んでくださったようである。
 博士ご夫妻は一回一回の人との出会いを大切にされている。そこに、深き「人格」を私は感ずる。
6  (なお博士は、池田SGI会長の一九七〇年代以来の訪ソ・訪中に触れて語っている。
 「人間と人間の交流、宗教や社会制度の違いを超えた真のヒューマニズムに立脚した、池田会長の思いと行動に感動しました」
 「池田会長は、中国では周恩来総理に会い、日中友好の道を開かれた。池田会長と創価学会が『冷戦の崩壊』に大きな影響を与えたのです」
 「池田会長は、教育に、文化に、平和にと、実に的確に投資をされている。もし創価学会が、一つの国としてこのように教育に貢献していくならば、どれほど素晴らしいか。
 国家が、軍事力ではなく、平和のための模範の教育を行っていけば、平和は訪れます。創価学会は、一国に匹敵する行動をしているがゆえに、さまざまな難を受けているのです」
 「遅かれ早かれ、池田会長のされたことは、日本でも完全に理解される時が来るでしょうが、まだ時間がかかると思います」)
7  また博士は、平和学者の信念として、常々、主張しておられる。
 「私は『ピース・ワーカー(平和のために働く人=平和の労働者)』を育成したいと思っています。それは、指導者とか管理者とかいうものとは違います。
 仏教でいう″同苦″のできる人、すなわち人の心の痛みのわかる人です。戦争や暴力は、文化や人の心を破壊してしまう。それを癒嫌すことが大事です」と。
 そうした観点からも、ガルトゥング博士は、創価学会の草の根の民衆運動を高く評価してくださっている。
 私どもは、ますます希望に燃えて、「古い友人」を大切に、そして「新しい友人」をつくりながら、平和の友情を世界に広げてまいりたい。
8  イプセン「人間の問題は女性が解決」
 六月十日は、日本の「婦人部の日」である。そのお祝いとして、少々、語っておきたい。
 博士と私との対談集『平和への選択』(毎日新聞社。本全集第104巻収録)では、「女性こそ、天性の平和主義者である」と語り合った。その中では、女性解放を先駆的に意識していた『人形の家』の作者・イプセンのことも話題になった。
 イプセンは、ガルトゥング博士の祖国・ノルウェーの文豪である。彼の『人形の家』は、戸田先生を囲んで学び合った教材でもあった。
 戸田先生が、その時、「男は強いばかりが能じゃない。横暴になるのではなく、たまにはこういう本も読みたまえ」と言われていたことを懐かしく思いだす。
 ほぼ百年前、イプセン夫妻は、「ノルウェー女権同盟」の祝賀会に招かれた。この折、イプセンはスピーチで、こう語る。
 「私には、いつもわが国を進歩させ、人民により高い基準を与えるという宿題がありました。これを成し遂げるには、二つの要素の協力が必要です」(原千代海編訳『イプセンの手紙』未来社)
 その二つの要素とは何か。「修養」と「訓練」である。
 「自分をつくる」ことと、しっかり何かを「身につける」ことともいえよう。
 そして、たゆみない努力によって、人々をこの「修養」と「訓練」に導く存在こそ、「母親たち」であると、イプセンは強調する。
 イプセンは、スピーチをこう結んだ。
 「人間の問題を解決するのは、女性たちです」「ありがとう! 女権同盟に乾杯!」(同前)
 同じ心で、婦人部の皆さまをたたえたい。
 婦人部の皆さまこそ、まさに「人間の問題を解決する」方々である。皆さまありて、女性の幸福があり、進歩がある。そうなってこそ男性の幸福があり、進歩がある。皆さまありて、人類は幸福になり、進歩すると、称賛申し上げたい。
9  「祈り」が根本である。とともに、どんなに祈っても、「努力」がなければ叶わない。
 仏法は道理である。仕事もしないで祈っているだけで成功するはずもないし、勉強しないで成績が上がるはずもない。
10  着実で堅実な信心即生活を
 生活に根ざして、着実な努力、堅実な努力。その信心即生活の軌道でこそ、祈りは厳然と叶っていく。必ず所願満足となっていく。努力なくして祈りが叶えば、人間は皆、怠け者になってしまう。苦労も悩みもなく祈りが叶えば、人の苦しみもわからず、慈愛がなくなる。
 妙法の真の功徳は、「冥益」である。木が、目には見えないが、年輪とともに、高く大きく大樹に育っていくような勝利の人生となる。そのために、着実にして堅実な信仰即人生が大切なのである。
11  リーダーが大事である。リーダーで決まる。
 『三国志』に、こういう一節がある。
 「けん、惟れとくく人にしたがわる」
 これは「ひたすら賢明で、人徳のある者のみが、人々の心服を受けられる」という意味である。
 自分である。自分を磨くことである。仮に、先輩にいやな幹部がいたとしても、自分がそうならないようにしていけばよい。自分が皆に安心されるリーダーになっていけばよいのである。こう決めていただきたい。
 ロサンゼルスは世界一、愉快に、朗らかに、仲良く、いきましょう!
 希望をもって一緒に「素晴らしきアメリカSGI」を築きましょう!

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