Nichiren・Ikeda

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日蓮大聖人・池田大作

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各部代表との協議会 「真剣の一人」にかなう者なし

1993.10.10 スピーチ(1993.6〜)(池田大作全集第83巻)

前後
10  翌朝、空はまっ青に晴れ渡っていた。
 オーストリア軍は、今朝、塔を引き渡すというので興味津々で集った。あれほどの大砲の攻撃を押し返した軍隊は、どんな連中か。さぞかし、粒選りの勇士を集めたにちがいない。塔から、フランス軍が出てくるのを、今か今かと待ちかねていた。
 すると、破れかかった門から、ひげもじゃの男が小銃を一束かついで、よろよろと出てきた。
 「あれが隊長か?」「それとも兵隊か?」
 オーストリア軍の連隊長は、塔から出てきた、くたびれた兵士の前に馬を進めた。
 「ほかの兵隊はどうした?」
 兵士は胸を張った。「私が守備兵の全部だ」
 「何だって!!」
 皆、驚きで声も出ない。沈黙は、すぐに歓呼に変わった。
 「勇敢なる守備兵よ、あなたこそ、勇者の中の勇者だ」
 ″敵ながら、あっぱれだ″──オーストリア軍は、彼に敬意を表し、荷物を全部、代わりに担って、フランス軍本隊へ送ったという。
11  ナポレオン「私の野心は『人類の全能力を発揮させる』ことだ」
 ナポレオンは晩年、語った。
 「私は、たしかに野心家だった。しかし、私の野心とは、『人類の全能力を十分に発揮させよう』という野心であった」
 この無名の勇者も、全能力を発揮し、「真剣の一人は、万軍に勝る」を証明した。
 「真剣の人」には、だれもかなわない。「真剣」のなかには「誠実」が含まれ、「責任感」が含まれている。そこから「勇気」も「知恵」も「勢い」も、わいてくる。
 ナポレオンはまた「いたずらに多くの人間がいても何にもならない。一人の人間こそすべてである」と。
 一人の「獅子」がいれば、そこから一切は開ける。烏合の衆になっては敗北である。人ではなく自分が、死力を尽くして戦う獅子になることである。
 そして自身も「広布の英雄」として万代に歴史を残し、同時に、民衆のなかの「無名の英雄」に光を当て、賛嘆しながら、「さすがだ」と感嘆される栄光の一生を飾っていただきたい。

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