Nichiren・Ikeda

Search & Study

日蓮大聖人・池田大作

検索 & 研究 ver.9

三十七回本部幹部会 仏法の″自由の精神″を世界ヘ

1991.1.6 スピーチ(1991.1〜)(池田大作全集第76巻)

前後
16  民衆の時代の新しき夜明け
 ところで、「ロシアの母」も強いが、「アメリカの母」も、これまた強い(笑い)。母が強いのは″万国共通″のようだ。(爆笑)
 以前にもお話しした、文豪スタインベックの大作『怒りのぶどう』。この作品の舞台は、一九三〇年代――ちょうどわが学会の創立まもないころ――のアメリカである。
 打ち続いた砂嵐や不況を理由に、地主に土地を取り上げられた農民一家。彼らが中古トラックに総勢十数人で乗り込み、故郷のオクラホマ州から、希望を託したカリフォルニアヘ移住していく姿を描いたドラマである。
 家財も売り払い、西部への長い旅路。いくつもの町を過ぎ、ロッキー山脈を越え、砂漠を横断する。テントで野宿をしながらの困窮の旅である。しかも、ようやくたどり着いたカリフオルニアでは、同じような境遇の移住労働者があふれ、飢えた″よそ者″に、人々の目は冷たかった。よいお金になると吹聴されていた果樹園の仕事も、機械化などの影響で失業が多かった。賃金も容赦なく切り下げられた。貧しさゆえの反抗も、暴力で弾圧されていた。
17  どれほど悲しいことがあろうとも、また、どれほど意地悪をされ、いじめられても、この一家は決してへこたれなかった。それは明るく、たくましい母―!″おっかあ″(笑い)の存在が支えとなっていたからである。″おっかあ″は、息子に語りかける。
 「あたしたちはほんとうに生きていく人民なんだよ、やつらになんかあたしたちを根こそぎやっつけられやしないよ、そうとも、あたしたちは人民だもの――生きつづけていくんだよ」(石一郎訳、『世界文学全集』第31巻所収、河出董房新社、以下同じ)と。
 息子は言う。――俺たちは「年がら年じゅうたたきつけられてるぜ」と。いやな思いばかりじゃないか、と言うのである。
 母は、″だからこそ強くなれるんだよ″と朗らかに笑いとばす。「あたしたちはあとからあとから生まれてくるんだよ、何もおそれることはないよ」「ちがった世の中がきかかっているんだよ」。新しい時代の夜明けなんだよ、と。
 私たちは「人間」なんだ。「民衆」なんだ。絶対にくじけてはいけない。「民衆」は次々に生まれ、生き続けていくのだから。今、「新時代」が到来しようとしているのだよ――こう言って、母は息子を力強く励ますのである。(拍手)
 アメリカン・デモクラシー(民主主義)の根っこにも、このように明るく強い「母」たちがあった。スタインベックは、その真実の姿を、文学を通じて人々に訴えたのである。
18  ともあれ、新世紀は、日一日と迫っている。新しい決意は、新しい時代を開き、新しい希望を生む。
 いわんや「わざはひも転じて幸となるべし」、「さいわいを万里の外よりあつむ」の妙法を持つ皆さま方である。すばらしき「民衆の時代」「幸福の新時代」への陽光につつまれながら、広布の大道を堂々と進んでいただきたい。(拍手)
 どうか、くれぐれもお体を大切に。風邪などひかれませんように。そして健康で、ますます朗らかに、生き生きと、また悠々と、この一年を歩んでいかれんことを念願し、本日のスピーチとしたい。ありがとう。ご苦労さま!
 (創価国際友好会館)

1
16