Nichiren・Ikeda
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昭和三十三年(二月)
「若き日の日記・下」(池田大作全集第37巻)
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4 二月四日(火) 快晴
朝、熱ありて、起床できず。一日中、静養。風邪、悪化の模様。近所の医者、来る。三十歳前後の医者で、まだ開院まもないとのこと。
父、T氏、Z氏、見舞いに来てくれる。
休みながら応対。お汁粉、美味。
ひとり考える。
① 大阪裁判の決着について
② 学会の第三代、第四代会長について
③ 続『人間革命』の整理について
④ 学会本部の建設について
⑤ 自宅の生活設計について 以上
遅くまで、妻にレコードをかけてもらう。三橋美智也をはじめ‥‥。
遅く、病める先生より「大作の病気の方はどうだ」と、奥様を通じて電話あり。申し訳なし。
5 二月七日(金) 雪後雨
東京──雪。寒い。
東京駅──十二時三十分発の特急にて、関西指導。東海道‥‥一直線に、雨、雨。
熱っぽい身体で、無理しての旅。御書を開くも、頭に泌みこまず。ぼんやりと、窓外を眺めつつの、一人旅に終始する。
大胆な、太い神経が勝つ乱世か、繊細な暖かい神経が、真の人間性か、青年は迷うなり。
強盛なる信心、純粋なる信仰、ということを思惟する。「革命」「不惜身命」‥‥常識、英知についても考えてみる。
「順縁広布」「化儀の広布」についても、重々、方法論とビジョンを、思索する要あり。
大阪に、多数の暖かき友と語りつつ、一泊。
6 二月八日(土) 曇
大阪より、姫路へ急行。
①指導会 ②班長会 ③地区部長会
初指導なれば、全魂を尽くす。「皆、″自信に満ちた″と語っていた」と。嬉しきことよ。
姫路城(白鷺城)を見学。
「源平の昔、安徳帝とともに逃れゆく姫達の路なり」と。美しく、哀れ多き白鷺城。その威容、戦陣にあらずして、詩情の姿と思えるなり。天正の秀吉、慶長の輝政、元和の本多、寛永の松平、寛延の酒井忠恭‥‥つわものどもの夢のあと。主なき時代の恐ろしき推移。
姫路に一泊。遅くまで眠れず。去来するもの、胸に多し。
7 二月九日(日) 快晴
朝、八時二十七分発(姫路駅)の列車にて、大阪に戻る。
S氏はじめ、幹部と、関西本部にて食事をしながら雑談。
先生の病状を心配しながら。
一時、本部にて「末法相応抄」講義。むずかしい。
夕刻、S宅にて、青年部幹部会。真剣な質問多し。関西は、ますます伸長の本質あり。
本部前の暗闇で、一青年部員が、二、三人の者と喧嘩。「小さなことで尊い生命を、傷つけては絶対にいけない」と、注意。
青年に、一冊の本を贈る。
多数の友と、大御本尊に、勤行。
8 二月十日(月) 曇後にわか雨
朝、九時二十三分──東京着。
寒い、灰色の東京。妻、一人だけ、迎えに来ている。寒そうに。
明日は、先生の、満五十八歳の誕生日。Nに、大幹部招待してくださる。私に、青年部を代表して、挨拶を‥‥とのこと。
先生なき本部に、一日在。
理事長、理事、青年部首脳と、種々打ち合わせ、雑談。原稿執筆等。
春遠からじ。
9 二月十一日(火) 曇
朝、九時、先生宅へ伺候。お元気のお顔を見、安心する。五十八歳のお誕生日である。
赤飯に、お汁粉を、先生とど一緒に頂戴する。一生の思い出であり、名誉である。経済のこと、株のこと、政治のこと、および、新時代へのあり方等についてお話をうけたまわる。
夕刻、五時三十分より、Nにて、先生の全快祝いに出席。大幹部、数十名。
先生は「一高寮歌」「白虎隊」の歌がお好きであられる。お身体のおやつれ方が心配でならなかった。しかし、歌を皆に歌わせ、厳然たる指導に、心嬉し。一同、心新たになったことであろう。よかった。嬉しい。
特に、仏法哲理の「源遠ければ、流れ長し」の御金言を引かれ、「幹部の自覚が根本である。一般会員の責任ではない。幹部の信心、成長で全ての組織の発展が決定されるのだ」との、厳しい指導が胸に残る。
10 二月十二日(水) 曇後晴
朝、先生のお宅へ、昨夜のお礼に参上。
先生、二階の床の上で、喜んでくださる。
① 中部の次期部隊長の件
② 人材の鑑別法
③ 唯物史観を勉強しておくこと
④ 労働組合の動きを知悉しておくこと。
大要、以上の指導あり。
先生のお顔色すぐれず。しかし、毅然たる姿勢に、力溢れる言語。
寒。春、いまだ来たらず。梅一輪、二輪。
夕刻より、御書研究会。真剣な求道者の姿に、胸打たる。この後輩達、必ず先輩達を、見事に、追い抜くことであろう。「後生畏るべし」とは、師の口ぐせの言。
帰宅、十時過ぎ。
「教機時国抄」を拝読。
四に国とは仏教は必ず国に依って之を弘むべし国には寒国・熱国・貧困・富国・中国・辺国・大国・小国・一向偸盗国・一向殺生国・一向不孝国等之有り、云云。
妻、甘酒をご馳走してくれる。桃の花咲く、弥生を楽しみつつ。
11 二月十三日(木) 晴一時曇
部隊旗、返還授与式。豊島公会堂。
O君の急逝により、W君へ。理事長等出席。七時より。
夜遅く、先生宅へ、報告に参上。
① 学会青年部の未来性への指示
② 学会幹部の指導原理
③ 仏法と社会への指向
④ 学会の究極の使命 以上
帰宅、十一時五十分、思うこと多し。妻より「顔色が悪いです」と注意あり。熱、少々あるようだ。
先生の指導を、遅くまでメモ。
風呂、湯が漏って、家中入ることができず。
12 二月十九日(水) 曇後晴
昼、暖。夜、寒。
午前中、先生宅へ。
① 少々、元気になったようだ
② 十年間、苦難の道を歩みゆけ
③ 君の本部入りは天の時だ
④ 理事室に、弥々、新風を入れる
⑤ 生活と経済について
以上の、ご注意、指示、指導をたまわる。
決意、強し。覚倍、堅し。
帰路、寒風厳し。
今日も、熱あり、三十八度三分。胸苦し。
13 二月二十二日(土) 快晴
十二時発にて、大幹部と登山。
暖冬、春の如し。
了性坊、寂日坊の落慶式。先生もお元気にご出席。無理をなさっておられる。少しお休みになっていただきたいことを、胸の中で思う。
「大幹部に、この一年で、十年間のことを指導し、指示する」と、厳然たり。
「阿諛諂佞の輩は全部切る」と。しかり。かつ「組織を乱しゆく者、信心利用の者も、また同じ」と。また、しかなり。
終わって、大講堂引き渡し等、種々の準備。
14 二月二十四日(月) 雨
熱とれず。疲れてならぬ。
夜、六時三十分より──本部にて輸送会議。十一時過ぎまで。H君をはじめ、青年部は、実によくやった。頭がさがる。必ずや大御本尊様の称賛あることを。幾十年の先に、この人たちの因果の実証、疑いなし。
① 本日で大講堂落慶式の準備完了
② 明日、パス会社、鉄道関係に書類を回すこと
③ 役員人事も決定す
これで、自分もほっとする。先生も安心してくださるであろう。
帰宅、一時少々過ぎ。風邑に入る。
飲めぬウイスキーを少々口にして休むことにする。時計、二時少々前。充実した、使命感に、誇り高し。