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日蓮大聖人・池田大作

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青春の混沌をこえて ゲーテ『若きウェルテルの悩み』

「若き日の読書」「続・若き日の読書」(池田大作全集第23巻)

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6  世界市民よ育て
 ゲーテの生きた時代は、ヨーロッパの一大激動期であった。大革命を経たフランスではナポレオンが皇帝につき、全ヨーロッパを版図に収めようとしていた。一八〇六年には、九百年近くも続いた神聖ローマ帝国が崩壊している。新時代への動きは、ヨーロッパだけに限られたものではなかった。
 ゲーテは「たいへん得をした」と語る。なぜなら、「最大の世界史的事件が、まるで日程にのぼったかのように起り、それが長い生涯を通じて起りつづける時代に生れあわせたからだ」と。そして、ゲーテは次のような事件をあげる。
  ・ 七年戦争(一七五六年〜六三年)
  ・ アメリカの独立(一七七六年)
  ・ フランス革命(一七八九年)
  ・ ナポレオン時代とそれに続く事件
7  ゲーテは、「生き証人」として、この時代を生き、描いていった。彼は詩人の鋭敏なる感性で、「時代」を的確にとらえていた。
 百七十年余りまえ、彼はすでに、「世界市民」との言葉を使っている。激動の時代を目のあたりにした文豪が、心から待望したもの──それは、民族的な先入見や震を乗り越えた「人間」の登場であった。
 二十一世紀を目前にして、世界はいっそう緊密に結ばれていくことだろう。しかし、真実の平和を実現する決定打は、自身の「心の束縛」を断ち切った「世界市民」が陸続と育ちゆくことにちがいない。

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