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日蓮大聖人・池田大作

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運命的な師との出会い 内村鑑三『代表的日本人』

「若き日の読書」「続・若き日の読書」(池田大作全集第23巻)

前後
6  ここに明らかなように、内村の価値判断の基準の一つに「独立」という概念がある。彼は熱烈な愛国者でもあったが、同時に「自由と独立」のために闘う外国人をも「同胞」あるいは「兄弟」と呼んで、決して排外的なナショナリストにはならなかった。
 その意味で彼の日蓮観は、国家権力からの自由と独立の側面に意義を見いだそうとする。伊豆と佐渡への両度の流罪、そして「竜の口の法難」についても「日本宗教史上、最も有名な出来事」として、とくに詳細なる描写を加えていく。さらには、西洋における宗教改革者マルテイン・ルターと対照させ、権力の迫害にも屈しない実践行を、高く評価しているのだ。
 むろん私は、初めて『代表的日本人』を読んだ際には、まだ信仰の道には入っていなかった。しかし、戦時中の国粋的な日蓮主義者たちの主張とは、およそ正反対の日蓮観を、すでに鑑三の著作から得ていたのかもしれない。
 ただし、それによって直ちに日蓮大聖人の仏法に興味を抱いていったのではない。あくまで、戸田城聖という一個の稀有な仏法者に接して、初めて師とすべき人物を見いだし、やがて私も信仰者の道を歩むことになったのである。
 戸田先生にお会いして十日後の八月二十四日、私は正式に入信の手続きをとった。そのときから数えて三十回目の入信記念日を迎え、まことに光陰矢の如しの感を深くする。この三十年間──あるときは、恩師より親しく薫陶を受けつつ、激闘の合い聞に、少しでも時間を見いだして、東奔西走の車中に活字をひろい読みしたこともある。机に向かっての長時間の読書は、ほとんどなくなったが、戸田先生はよく「青年よ、心に読書と思索の暇をつくれ」と激励され、特別に読書グループもつくってくださった。
 それがのちに、創価学会青年部の有志を集めた教育機関ともいうべき「水滸会」、また女子部の「華陽会」へと発展していくのだが、次回からは、無類の読書家でもあった恩師の折々の指導も紹介しつつ、わが青春の読書歴を綴ることにしたい。

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