Nichiren・Ikeda
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パラシュートの米兵
「私の人物観」(池田大作全集第21巻)
前後
7 七時ごろになったろうか。私は、外へ出た。あたりは、すっかり明るい。空は、晴天であった。昨夜の空襲がうそのように、静けさが朝を支配する。私はともかくあの米兵の落としたものを見つけたい一心であった。ひたすら落下地点めざして歩いていった。あった。それは、白い包帯の分厚い包みであった。
私は、近くの駐在所へ、その包帯を届けた。年配の巡査は、貴重品を扱うように調べながら、緊張しながら、すぐに電話連絡をとっていた。駐在所を後にして、歩きながら、あの捕虜になったであろう若いアメリカ兵のことが気になってならなかった。
人びとが、道端で輪になって話していた。米兵のことだった。彼は、地上に墜落するや、知らせを受けてやってきた憲兵に、目隠しをされて連行されていったという。その前に、駆けつけた人びとによって、棒でさんざん打たれたということだった。日本刀をもって「殺してやる」と駆けつけた男も二人いたという。
私は、彼を心からかわいそうに思った。
8 彼は、疑いもなく私たちを焼き尽くそうとした圧倒的な暴力の一部分であった。当然、怒りの対象であった。しかし、私は、私の予想に反した彼の少年に近い顔が強烈な印象であったゆえであろうか。私の頭のなかは、いささか混乱を呈した。今にして振り返ってみれば、その一つの事実もまた戦争の愚を教えているように思えてならないのだ。