Nichiren・Ikeda

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日蓮大聖人・池田大作

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宇宙の律動とアインシュタイン  

「私の人物観」(池田大作全集第21巻)

前後
8  この宇宙と世界の調和を前にして湧き起こる感情が、彼をして限りない真実への肉薄へ駆り立てる一方、それと相即、補完し合う、ある種の宗教を、喫緊の要請と感ぜしめたのであろう。
 生きることに誠実であった科学者アインシュタインは、科学の論理のみで、生きることの根拠を探り当てられるとは、信じていなかったにちがいない。少なくとも彼が、その思い上がりから遠かったことは事実である。人というものは真理に忠実であるほど謙虚なのであろうか。
 それだけに私は、次のような彼の言葉が、じつに重く響く。「今日の社会はあまりにも科学が発達しすぎた。いまこれを使いこなす新しい精神文明が発達しなくてはならない。これを私は東洋に期待する」と。
 彼は一九五五年四月、七十六歳の高齢をもって生涯の幕を閉じた。以来、はや四半世紀が過ぎ去ろうとしている。科学技術の弊害を説く声は、当時とは比較にならぬほど高い。バイオリンをこよなく愛し、白髪、温顔に常に笑みを忘れやす、プリンストン高等研究所で思索の旅をつづけていた彼の眼に、現代の世相はどう映るであろうか。
 そんな感慨をいだくたびに、数学や科学が好きで、アインシュタインを敬愛してやまなかった恩師の慈顔が、私には思い出されてならないのである。

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