Nichiren・Ikeda

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日蓮大聖人・池田大作

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一枚の鏡  

「私はこう思う」「私の人生観」「私の提言」(池田大作全集第18巻)

前後
3  昭和二十七年、私が結婚した時、妻は新しい鏡台を運んできた。私の顔は、新しい鏡に映すことになったが、ある日、妻は破鏡の一片を手にして、不審顔で見ていた。ガラクタの廃品もいいところである。子供のおもちゃにしては、さっぱり魅力がない。屑篭行きの運命を、私は察知すると、初めて妻に、母や戦死した兄のこと、この鏡の破片にからまる歴史を語った。
 妻は、桐の小箱をみつけてきて、鏡をそれにしまって、無事今日に至っている。
 一本のつまらぬ万年筆といえども、それが大作家の遺品とあれば、数々の傑作の秘密を語っていよう。人々の注目を浴びることも当然なこととされている。
 私の一枚の鏡は、私自身の伝えがたい青春の日々と、母の祈りと、不幸な長兄のことを尽きることなく語っているようである。

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