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日蓮大聖人・池田大作

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滝山祭・そして恩師戸田先生 池田大作  

「四季の雁書」井上靖(池田大作全集第17巻)

前後
7  恩師のことだけを書いてきましたが、どうしても七月を迎えるとそこに筆が進んでしまうのです。ご容赦下さい。戸田先生は権力にも権威にもこびず、貧しい人の、苦労している民衆の味方でした。庶民の足下の問題を、膝をまじえつつ語り合う時、路地から路地へと一軒一軒、訪ねている時が、最もうれしそうでした。それに青年をこよなく愛された。先生は鋭く、青年こそ新しい時代を開く力であると見極め、実際の行動をもって示された人でした。
 ともかく戸田城聖という人格は、将来においてさまざまな角度から論じられると思いますが、私にはこの、生涯、庶民と共に歩み、青年を愛した――という事実が、戸田城聖という人物を見る場合、決定的な視点となるとひそかに考えているのです。
 昭和三十三年に逝去されて以来、私の心の中には、いつも戸田城聖という人格がありました。それは生きつづけ、時に黙して見守りながら、時に無言の声を発するのです。生命と生命の共鳴というのでしょうか。ある風景や場面に出くわした時、なぜかここに以前きたような思いを味わうことがありますが、それに似たような感覚を私はしばしば体験することがあります。
8  雑然と、思いの浮かぶままにつづってまいりました。あまりにも私自身と関連したことばかりで、恐縮いたします。ただ私という一人の人間の底にある想いをお汲みいただけたら幸甚でございます。これからは猛暑を迎えます。ご健勝にて、つつがなくお過ごしなされるよう、心より祈っております。
 一九七五年七月十一日

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