Nichiren・Ikeda

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日蓮大聖人・池田大作

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6 「人間らしさ」の条件  

「21世紀への人間と哲学」デルボラフ(池田大作全集第13巻)

前後
7  しかし、いかなる倫理体系も、自分を慈しむ、つまり自己実現への努力ということだけでは構築できません。自己に対する義務ばかりでなく、他者に対する義務もあるという観点は、西洋の道徳規範においても、仏教においてもとうぜんなこととされています(ここで私は、仏教の六波羅蜜をこのような道徳規範と考えてよいという前提で話をすすめています)。そこで、注目すべきことと思えるのは、仏教の自己完成の思想には、カントも断固として拒否した快楽主義への志向がまったくないことです。つまり、幸福は他者への奉仕にあり、自分だけの享楽にはけっして存在しないのです。
 以上の比較考察をまとめてみて、とくに私が強調したいのは、悟りヘみちびく仏教の六波羅蜜の教えは、その方法においては多くの西洋の倫理との共通項をふくんでおり、その目的においては、人道主義的理念やキリスト教的愛の理念にかわるものであるということです。それゆえ、われわれ西洋人も真剣に受け取るべき重要な理念であると思います。
8  「自己自身を認識する個人的精神」
 アリストテレスの「ノエシス・ノエセオス」のこと。精神活動に対する反省をいう。
 ハンス・ヴァルデンフェルス
 (一九三一年―)ドイツのカトリック神学者。ボン大学教授。京都学派・西谷啓治博士の「絶対無」に関して研究、博士論文を書いた。

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