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日蓮大聖人・池田大作

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愛国心と文化の融合  

「第三の虹の橋」アナトーリ・A・ログノフ(池田大作全集第7巻)

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6  池田 私も、日本が軍国主義の道を、ちょうど坂道を岩がころげ落ちていくように突っ走り、悲惨な敗北を喫した時代に少年期、青年期を過ごしました。当時の軍部政府が、いかに国民の眼を狭い世界に限定し、偏狭な愛国心へかりたてていったか、それが、どんなに無残な悲劇であるかを身をもって知ることができました。このような愚かなことは、二度と繰り返されてはならないと思っています。
 ログノフ 私は学問に仕える者ですが、私の年代のすべての人と同様、社会の生活、戦争と平和の問題について考えます。まだ根絶されていないファシズムのテーマにたちかえって、私は次のことが言いたいのです。過去の歴史体験からわかるように、新たな破壊的戦争を許さないよう努力している私たちはなんらかの国際機関――行動や宣伝によって世界を新たな流血の大量殺戮へ押しやろうとする政治家やイデオローグたちを裁くことができる国際法廷といったものを設立する必要性があるのではないでしょうか。
 あなたは愛国心にふれ、総合雑誌のアンケート調査のエピソードをあげられました。そしてその結果、六割以上の人々が「日本と運命を共にする」と答えたと述べられていますが、それは興味あることだと思います。
 ところで、日本で製作された「日本沈没」という映画がソ連でも広く公開されました。この映画は世界のすべての国民が日本人に援助の手をさしのべるという結末で終わっています。私自身もこの映画を見ました。この映画の作者が、日本からのSOSに応えた国のなかに私の祖国ソ連をも加えたという事実が私にはとてもうれしいことでした。率直にいって、この仮説的な問題のこのような解決、つまり“SOS”の信号を受け取った外国の船はどの航路を進んでいるかにかかわらず、ただちにコースを変え、被災者の援助に急行するといった結末が私にはたいへん気に入りました。
7  わが国には「真の友は不幸の時にわかる」という諺があります。日本語にも同じような意味の諺があると思います。それは必ずあると思います。なぜなら、日本人は不幸とは何か、互助とは何かをよく知っているからです。それをあなたがた日本人に教えたのは、作家や学者ではなく、地震とか火災とか津波との戦いでした。
 だれが人々に未来への確信をいだかせ、人々に愛国心と国際主義の調和した精神を教えることができるでしょうか。現実に悲劇が起こった時、日本人は孤立化するようなことはありません。必ず他の国民が日本人の救援にやってきます。それはまったく明らかなことです。諸国民はわが地球の一部である主権国日本の運命に無関心たり得ないのです。それは、世界文化の不可分の一部分である日本独特の文化の運命に、そして世界共同体の不可分の一部である日本国民の運命に、他のどの国民たりといえども無関心たり得ないのと同様です。なぜといって、世界――それは船であり、私たちのすべてはその乗員だからです。私たちは、勤勉な働き手としての日本人をよく知っています。すでに長年にわたって私が描いている日本人像は、労働の汗のシンボルとしてのハチマキ姿をした農民や労働者です。雑誌の質問が広範な住民、生活苦と戦うことに慣れた日本人の一般民衆に向けられたものであるとすれば、彼らは「われわれはなお自分を守る――これは日本語では《がんばろう》というそうですが――。そしてわれわれの民族や文化が滅びたり、子孫が未来をなくしたりすることを許さない」と答えるでしょう。

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