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後記 「池田大作全集」刊行委…  

「闇は暁を求めて」ルネ・ユイグ(池田大作全集第5巻)

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1  「池田大作全集」第四回配本は「闇は暁を求めて」と題するフランスの世界的美術史家ルネ・ユイグ氏と池田名誉会長との対談である。これは全集の通巻では第五巻となる。
 両者の対談は一九七四年四月、来日していたユイグ氏が、聖教新聞社を訪問したときに始まる。以来、交流は往復書簡も含めてつづき、六年後の一九八〇年九月に、フランス語版がフラマリオン社から出版され、さらに一年後の一九八一年十月に、日本語版が講談社から発刊された。その発刊以降も両者の交流は拡大、深化し、その友情が東京富士美術館における三回に及ぶフランスの至宝ともいえる名画展となって花開いたのである。
 また、一九八八年四月には、池田名誉会長がユイグ氏に対して「精神エスプリの誇り高き響き」と題する長編詩を贈っている。さらに一九八八年五月には、パリのジャックマール・アンドレ美術館で、「永遠の日本名宝展」と「池田大作写真展」がユイグ氏の尽力で開催され、好評を博した。
 ユイグ氏は一九〇六年生まれで、本全集発刊時点で八十三歳を数える。一九二七年、ルーブル美術館の絵画部長として、また一九五一年以降は、コレージュ・ド・フランスの造形芸術心理学の教授を務める等、多方面で活躍。第二次世界大戦のさなか、世界的財産でもある膨大な美術品を、ナチの掠奪から生命を賭して守り抜いたというエピソードも有名である。現在は、アカデミー・フランセーズ会員であり、国立博物館協議会会長、フランス学士院ジャックマール・アンドレ美術館館長も務める。
2  ユイグ氏は、名誉会長の印象について、こう述べている。
 「私と日本を結びつけているのは、池田SGI会長との大変深い友情の絆と言わねばなりません。会長の考え方や真心と思いやりにあふれた感性にひかれます」
 「『池田大作写真展』の中で、私が強調したかったのは、会長は生命の探求者であるということです。私はこれらの写真を通じて、生きとし生けるものの鼓動から、永遠の生命に向かって昇りつづけようとされているSGI会長の姿を思い描いたのです」と。
3  それに対して名誉会長は、先に触れた詩の中で次のように称えている。
  「おお
  尊敬するユイグ氏よ
  貴方こそ
  レジスタンスの不屈の闘士にして
  『真実』と『人間』の友
  真正の勇者ならん
  私は貴方の姿に
  あの伝統の光輝満つ
  フランス・ユマニスムと
  フランス・モラリスムとの
  まことに美事なる結晶を見る」
4  「対談編」は、本全集の柱の一つであり、十数巻が予定されている。対談者の多くは、欧米を代表する世界的知識人・文化人であるが、この点について著者は、本対談の序文で次のように述べている。
 「私が仏教の世界とは離れた西欧の知識人、思想家との対話を思い立ったのは、一つにはこの点(編集部注・仏法の偉大さを現代に再証明すること)について自分でも納得したいがためであった。先に対話した故A・J・トインビー博士は、今世紀を代表する歴史家の一人であり、人類の文明を歴史的にとらえられている大局的洞察力は、私の思考を全体的に検証するためのなによりの鏡となった」
 つまり、仏法の偉大さを証明するために、あえて西欧の一流の知性と対話を重ねながら、対談者の共感を呼びつつその偉大さを広く展開し、ひいては世間の人々にも認識を与えることに一つの大きな主眼があるのである。そこで語られる内容は、人生論から文明論までまさに百般にわたる。そして対談者は、多くの点で心から納得し、池田名誉会長の人格に共鳴し、それらを通して仏法の偉大さに対する認識を深めていくのである。このような対話の輪が広がれば広がるほど、また読者がふえればふえるほど、真の生命の尊厳のあり方に目覚めた多数の人々が自己の生き方を変え、真に価値ある人生を歩み始めるにいたるであろう。
 もともと対談とは、異なった人間と人間の生命の打ち合いである。誠意と誠意が交わるところには、その両者のおかれている様々な相違や障壁を乗り越えて、ある時は互いの共鳴板を打ち鳴らしながら、また、ある時には啓発しあいながら、論が展開されていくものである。そこに“対談の妙”があり、読者を魅きこまないではおかないものが現出するのである。
5  池田名誉会長の対談は、まさにその典型である。名誉会長の心の世界は非常に幅広く奥深く、かつ重層的である。その心の世界は、相手の対談者という鏡によって、じつに多様な光を発する。そしてその奥からは、絶えず慈愛の陽光が射しつづけられているのである。そこには大誠実に裏打ちされた厚い信頼と友情が一貫して流れている。ゆえに対談を重ねるうちに、その人格に魅了されていくのだろう。
 現代の地球を覆う様々な暗雲は、ますますその層を厚くしそうな様相である。その意味で現代世界はまさに「闇」である。そのなかにあって創価学会は、仏法という巨大な太陽の光を全人類に与えんと、懸命な活動を展開しているのである。
6  フランス語版の本対談集のカバーには、ゴッホの眼と仏陀の眼が対置されている。ゴッホの眼はヨーロッパの文明の危機に直面した人間の狂気、恐怖を表現したものであり、その現代文明の苦悩を克服する道を仏陀の眼が示していると、ユイグ氏は解説する。そして氏はいう。
 「私はSGI会長こそ、この仏陀の眼を備えた、現代の世界における最も高貴なる人格者であり、実践者であると強く、申し上げておきたいのです」と。
 仏法の偉大さは人間を通して具象化され、証明される。ゆえに、この仏法理解の輪が幾重にも広がるところ、必ずや人類の「暁」は近いことを信ずるものである。

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