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日蓮大聖人・池田大作

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芸術と文字――西洋  

「闇は暁を求めて」ルネ・ユイグ(池田大作全集第5巻)

前後
28  さらに付け加えていえば、現代において西洋の芸術の発展が招いた転倒から、デッサンは――絵画も同じです――もはや、あなたがいみじくもいわれたように“自己の前にある対象”を再生する義務を負っているとは考えていないのです。そこに、抽象芸術の冒険が始まるわけですが、幾何学を支えにしたものや、マレヴィッチ(二十世紀前半のソ連の画家)派やモンドリアン派の描いているものとは別に、もう一つの流派があらわれます。それは、アメリカ人たちが意味深くも“行動絵画”アクシヨン・ペインテイングと呼んだもので、アメリカではポロック、フランスではマテューとかアルトゥングが、手の衝動を記録する筆の純粋な画法に基礎をおいた芸術を考えついたのです。
 しかも、これらの芸術家の多くは、日本の書道に興味をもっており、トビーなどは、東洋に長いあいだ滞在していました。そして、このような傾向は、十九世紀末に極東の芸術について、なによりも浮世絵を通じて知識が得られるようになって以後、初めて西洋にあらわれたものであることを強調しておく必要があります。
29  池田 浮世絵は、日本において江戸時代にいわゆる庶民の世界の芸術としてあらわれました。明治時代になって、江戸庶民の文化的伝統は陰にかくれ、浮世絵は一般の人びとからは忘れられてしまいました。
 最近になって、日本の浮世絵がヨーロッパとくにフランスの近代画家たちに大きい影響を与えていたことが知られ、日本人自身が驚いているような状態ですが、浮世絵のとくにどういった点が西洋近代絵画に影響を与えたのでしょうか。

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