Nichiren・Ikeda

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日蓮大聖人・池田大作

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人間と宇宙  

「闇は暁を求めて」ルネ・ユイグ(池田大作全集第5巻)

前後
19  さらに細胞から組織、器官を経て、私たち人間生命もその中に含まれている“個体”の次元に到達します。これらのそれぞれの段階で、その独自の法則性と調和が見いだされます。
 私たち人間は、生物学的個体として、他の数多くの生物と同じ次元にあって生態圏を構成している一員です。そして、この生態圏に支えられて人びとの生存が維持されているのですから、もし、生態圏の調和を乱し、その秩序を破壊すれば、自らの破滅を招くことは当然でしょう。
 人間は、このように本来、宇宙的調和の中の一部分でありながら、個としての独自性に対する自覚を発現し、自己の存在の維持と欲望の充足のために、全体の調和をつくりかえ、社会をつくり文化を創造してきました。ここに、人間が、たんに生物学的個体であることを超えて、精神的存在となったゆえんがありますが、それは、つねに全体の調和を破壊する危険性をはらんでいるわけです。
 端的にいえば、人間の高度な精神は、宇宙的調和を破壊しようとする傾向性をもっており、それは、とりもなおさず、生物学的個体としての存在の基盤を破壊する危険性でもあります。これを食いとめるには、高度な精神的次元で、この危険な性向を制御できる別の力が確立されなければなりません。つまり、精神的次元での調和と秩序が実現されなければならないのです。私は、この役割を担うものが、同じく高度な精神の所産である宗教であると信じています。
20  とくに仏教は、人間存在の基盤である、万物の複雑な階層的構造を明らかにし、そこに働く微妙なメカニズムを“縁起観”として教えています。“縁起”とは、いっさいの事象は互いに依存しあい、助け合っているということで、いっさいの存在は、この“縁起”の産物であると仏教は示します。私は、この仏教の教えを人びとが自ら精神世界の中に取り入れたとき、エゴイスティックな衝動を抑制する強い精神的な力となり、そこに確立された調和と平衡は、かならず人間存在と環境との調和を実現していくであろうと考えています。

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