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日蓮大聖人・池田大作

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人間革命  

「闇は暁を求めて」ルネ・ユイグ(池田大作全集第5巻)

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7  これは、詳しくは、また別のところで述べたいと思いますが、仏教では、いかなる目的をもって生きるかによって、その生命のもつ状態がさまざまに異なることに注目し、基本的に十種の状態を区別しています。いわゆる十界の考え方がそれですが、細かい説明はここでは避けます。大きく立て分けていえば、自己の本能的欲望の充足や感覚的喜びを求める利己的な目的に生きるか、他の人びとや、さらには他の生き物の幸福に奉仕することを自分の喜びと存在理由とするかということです。戸田会長自身についていえば、事業家として生きようとしたときの目的観は、基本的には利己的なものでした。しかし、仏法の布教者として生きると決めた以後の目的観は、他者への奉仕を根本とする利他的なものです。
 いうまでもなく、他者への奉仕の仕方は、戸田会長のように、仏法の布教だけにはかぎりません。それぞれの仕事も、その取り組み方によって、ただ自分と自分の家族を養うためばかりでなく、他者への奉仕の手段として生かしていくことができます。そして、同じ仕事をするにしても、それをたんに自分のために利益をうる手段としてではなく、他者への奉仕につながっていることを自覚したときに、その仕事は、自己のより大きく深い喜びと意欲を呼び起こしてくれることでしょう。
8  私は、戸田会長の呼びかけによってめざめた人びとの歩んだ軌跡、創価学会の歴史自体が人間革命の潮流であるとの視点から、創価学会の歴史を小説として著し『人間革命』と名づけました。しかし、創価学会という一つの組織の中での人びとの歩みだけが人間革命の実証例ではありません。あらゆる世界の、あらゆる分野で、人間は自己の人間革命をめざすべきであり、利己的な生き方から利他的な生き方への転換、なによりも自己の本能的欲望や感覚的喜びのとりこになっている状態から、主体的に自己変革に取り組んでいこうとする姿勢に立つこと自体が、私は、現代の苦悩をもたらしている原因を根源的に打破する鍵であると信じています。
 そして、それは、たんに現代の危機の打開の道であるというにとどまらず、人間が真実に人間としての存在理由を確固たるものにする道であると考えるのです。
9  ユイグ しかし、人間が自己の変革、その内面的な更生に取り組めるようになるためには、その原理や形態について学ばなければならないという問題が残っていますし、さらに、社会の平和が保障される必要がありましょう。ところが、現代世界を見ると、たんに資本主義社会とマルクス主義社会のあいだばかりでなく、ソ連と中国のようにマルクス主義国家同士のあいだで、戦争の脅威が見うけられます。

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